04認知症コラム
記憶力を上げるのに大切な3つの方法とは?
40代・50代からも始められる習慣
2024.12.26
「記憶力を上げる方法を知りたい」と考えている方は多いでしょう。年齢を重ねるにつれて記憶力は低下していきますが、40代や50代からでも記憶力を向上させることは可能です。この記事では、記憶の仕組み、記憶力低下の原因を解説し、記憶力の良い人に共通する特徴や記憶力を上げる効果的な方法も紹介します。
記憶力の基本知識
記憶力とは、ものごとを忘れずに覚えておく力を指します。日常生活において、人の名前を記憶したり、仕事のタスクを効率的にこなしたりするうえで不可欠な能力です。また、記憶力は思考力、判断力、創造力にも深く関わっており、私たちの知的活動の基盤となっています。
記憶のプロセス
記憶には、「記銘」「保持」「想起」という3段階のプロセスがあります。「記銘」は情報を取り入れる段階、「保持」はその情報を保存する段階、「想起」は必要なときに思い出す段階です。
記憶力の良し悪しは、これらのプロセスの効率性によって判断されます。つまり、どれだけ多くの情報を記銘できるか、どれだけ長く保持できるか、どれだけ速く想起できるかが重要な指標となります。
プロセス | 概要 |
---|---|
1.記銘 | 情報を脳に登録する |
2.保持 | 登録された情報を脳に保存しておく |
3.想起 | 保存した情報を必要に応じて取り出す |
心理学領域における記憶の種類
心理学領域では、保持時間によって記憶を「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3つに分類しています。感覚記憶のうち、注意を向けた情報が短期記憶となり、さらに重要な情報は長期記憶へと移行します。長期記憶は容量に制限がなく、永続的に保存される記憶です。
覚えておきたい情報がある場合は、集中して繰り返し復唱するなどの方法を用いることで、短期記憶から長期記憶への移行を促進できます。
記憶の種類 | 概要 |
---|---|
感覚記憶 | 最も保持期間の短い記憶 |
短期記憶 | 保持期間が数十秒程度の記憶 |
長期記憶 | 数分から一生に渡って保持される記憶 |
記憶力が低下してしまう6つの原因
記憶力の低下にはさまざまな要因があります。ここでは、記憶力の維持・向上対策を図るうえで押さえておきたい、記憶力低下の主な6つの原因についてみていきましょう。
加齢による認知機能の衰え
年齢を重ねると脳の神経細胞とシナプスの数が減少し、認知機能に影響を与えます。加齢による記憶力の低下は誰にでも起こりうる現象です。
また、加齢にともなう血流の減少や酸化ストレスも脳機能の低下を引き起こします。その結果、とくに短期記憶や新しい情報を学習する能力が低下しやすくなります。
日々のストレス
持続的なストレスは、体内でのコルチゾールというホルモンの過剰分泌を引き起こし、記憶の形成に重要な役割を果たす海馬にダメージを与えます。海馬は新しい記憶の形成と長期記憶への変換に不可欠な脳の部位です。そのため、慢性的なストレスは記憶力低下の大きな原因となります。
偏った食事による栄養不足
栄養が不足すると、記憶力に影響を与える可能性があります。とくにビタミンB群やオメガ3脂肪酸は、脳の健康維持に欠かせない重要な栄養素です。これらの栄養素が不足すると、神経伝達物質の生成が減少し、記憶力に悪影響を及ぼします。
また、過剰な糖分や質の悪い脂肪の摂取も脳機能に悪影響を与えることが知られています。記憶力の維持・向上を図るためにも、バランスの取れた食事を心がけることは非常に重要です。
慢性的な睡眠不足
睡眠中、脳は情報の整理と記憶の強化を行います。慢性的な睡眠不足はこのプロセスを妨げ、記憶の定着を困難にするため注意が必要です。さらに、睡眠不足は注意力や集中力の低下を引き起こし、学習効率も悪化させます。
質の良い睡眠を十分に取ることは、記憶力を維持し、認知機能を最適化するために不可欠な要素です。
特定の薬の影響
抗うつ薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬など特定の薬剤が、記憶力の低下を引き起こす場合もあります。これらの薬が、脳の神経伝達物質に影響を与える作用をもたらすためです。
ただし、自己判断で薬を中止することは危険なため避けましょう。記憶力の低下が気になる場合は、必ず専門医に相談し、適切なアドバイスを受ける必要があります。
心身の不調や病気
うつ病や不安障害などの精神疾患が、脳の機能に直接影響を与え、記憶障害を引き起こすケースもあります。また、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患も記憶力の低下を引き起こす原因となります。記憶力の維持には、これらの疾患の早期発見と適切な治療が重要です。
記憶力が良い人は何が違う?
記憶力が良い人には、いくつか共通した特徴があります。記憶力を向上させるためには、記憶力が良い人の特徴を理解し、自分の生活に取り入れてみることが大切です。
好奇心が旺盛
記憶力が良い人は、常に新しい知識や情報を求める強い好奇心を持っているのが特徴です。好奇心が脳を刺激し、記憶の定着を助けるため、学習効果が高まります。
また、情報の背景や関連性を理解しようとするなど物事を深く考える習慣は、より質の高い記憶形成につながります。
生活習慣が整っている
毎日の生活リズムが整っている点も、記憶力が良い人の特徴の一つです。規則正しい生活は脳が効率良く働くことを助け、情報の整理や記憶の定着をスムーズにします。とくに十分な睡眠は、脳の回復と情報の整理において重要です。
また、適度な運動は脳の血流を改善し、記憶力向上に寄与します。これらの健康的な生活習慣が、記憶力を高める基盤となります。
相手の話を積極的に聞こうとする
記憶力の良い人は、相手の話に集中し、内容を深く理解しようと努める傾向があります。相手の話を聞くことは、自分の頭で考えることにもつながり、脳が刺激されて記憶が残りやすくなるためです。
また、積極的に相手の話を聞く姿勢は、人間関係の構築にも役立ち、記憶力と対人スキルの両方を高められます。
集中力が高い
高い集中力も記憶力が良い人の大きな特長です。周囲の雑音や気になることを排除し、目の前の課題に全力で取り組める集中力の高さは、情報の記憶と定着を大いに助けます。趣味や興味のあることに関する記憶が残りやすいのも、「知りたい」という気持ちが集中力を高めるからです。
記憶力を上げる方法①生活習慣を改善する
記憶力の向上には、日々の生活習慣の改善が大きな役割を果たします。ここでは、脳の健康を維持し、記憶力を高めるうえで効果的な生活習慣の改善方法を紹介します。
一定のリズムで深く眠る
記憶力向上の基盤となる質の高い睡眠を得るためには、規則正しい睡眠習慣を身につけることが大切です。脳は睡眠中に昼間得た情報を整理し、記憶を定着させる重要な作業を行います。毎晩同じ時間に就寝する習慣をつけることで、体内時計が整い、質の高い睡眠を得やすくなります。
- ポイント
- 寝る前のルーティンを決めることで、心身をリラックスさせスムーズな睡眠につながる
適度に有酸素運動をする
定期的な有酸素運動は、脳の健康維持と記憶力向上に効果的です。有酸素運動によって脳に酸素と栄養が供給されると、血流が促進され、記憶力と集中力が高まります。
また、適度な運動はニューロンの成長をサポートし、脳の働きを活性化させる効果も期待できます。さらに、運動後にはリフレッシュ感が得られ、ストレスの軽減にもつながるでしょう。
- ポイント
- 週に2回、30分程度の有酸素運動を取り入れるのがおすすめ
趣味を楽しんでリラックスする
趣味や好きなことを楽しみ、ストレス解消やリラックスすることも記憶力向上に効果的です。日常のストレスやプレッシャーから解放され、心身のバランスが整えば、脳の疲労が軽減され、集中力や記憶力が向上します。
自分に合った趣味を見つけ、定期的に楽しむ時間を設けるようにすれば、脳の健康と記憶力の維持・向上につながるでしょう。
- ポイント
- クリエイティブな活動や自然と触れ合う趣味はとくに脳のリフレッシュに効果的
記憶力を上げる方法②栄養豊富なものを食べる
適切な栄養摂取は、脳の健康維持と記憶力向上に欠かせません。記憶力向上に役立つ主要な食品とその効果についてみてみましょう。
食品 | 効果 |
---|---|
イワシ・サバ などの 青魚 |
DHAやEPAが豊富に含まれており、脳の神経細胞の成長と修復を促進し、学習能力や記憶力の向上に寄与。ビタミンDは脳の機能をサポートし、精神的な健康の維持に役立つ。 |
豚肉 | ビタミンB群が豊富に含まれており、とくにビタミンB1は糖質をエネルギーに変える重要な役割を果たし、脳の活動を活発にする。鉄分や亜鉛は酸素を脳に運ぶ役割を果たし、記憶力や集中力の改善に貢献する。 |
バナナ | ビタミンB6を豊富に含み、神経伝達物質の生成を助けることで記憶力や集中力を高める効果がある。カリウムも多く含まれており、脳の血流を改善する役割を果たす。 |
ごま | ビタミンEが豊富で、その抗酸化作用により脳の老化を防ぐ効果がある。セサミンという成分が肝機能をサポートし、脳への栄養供給をスムーズにする。 |
チョコレート などの カカオ |
フラボノイドという抗酸化物質が豊富に含まれており、脳の血流を改善し神経細胞の成長を促進。カフェインやテオブロミンが脳を刺激し、集中力を高める効果がある。 |
イワシ・サバなどの青魚
イワシやサバなどの青魚には、DHAやEPAなどの質の良い脂肪が豊富に含まれており、脳の神経細胞の成長と修復を促進し、学習能力や記憶力の向上に大きく寄与します。
また、青魚に含まれるビタミンDは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの生成を促進し、うつ病のリスクを抑えられる可能性もあります。精神的な健康維持にも貢献するでしょう。
豚肉
豚肉はビタミンB群が豊富に含まれており、脳のエネルギー代謝をサポートします。とくに糖質をエネルギーに変え、脳の活動を活発にする重要な役割を果たしているのがビタミンB1です。
さらに、酸素を脳に運ぶ役割を果たす鉄分や亜鉛も多く含まれており、脳の機能を向上させ、記憶力や集中力を高められる可能性があります。
バナナ
バナナは脳の機能をサポートする栄養素が豊富に含まれており、エネルギー供給源として非常に優れた食品です。とくにビタミンB6は神経伝達物質の生成を助け、記憶力や集中力を高める効果が期待できます。
また、バナナに多く含まれるカリウムは、脳の血流を改善させる効果も見込めるでしょう。
ごま
ごまに多く含まれるビタミンEは強力な抗酸化作用を持ち、脳の老化を防ぐ効果が期待できます。
また、肝機能を改善するセサミンという成分が含まれているのも特長です。肝臓は体内で最も多くの活性酸素が発生する臓器であり、その健康が全身の老化に影響を与えます。セサミンによって肝機能が向上すれば、脳への栄養供給もスムーズになり、長期的な脳の健康維持につながります。
チョコレートなどのカカオ
カカオを含むチョコレートは記憶力を高めるうえで効果的な食品です。とくに、フラボノイドという抗酸化物質を豊富に含むダークチョコレートは、脳の血流を改善し、神経細胞の成長を促進する効果があります。
また、カカオに含まれるカフェインやテオブロミンは脳を刺激し、集中力を高める働きがあるため、適度な量を摂取するのがおすすめです。
記憶力を上げる方法③
科学的アプローチを取り入れる
記憶力向上には、科学的アプローチを取り入れてみるのも効果的です。ここでは、効率的に記憶力を高められる、科学的アプローチの具体例をご紹介します。
サプリメントで栄養素を補う
日々の食事だけでは、記憶力向上に必要な栄養素をすべて摂取するのが難しいケースもあるため、サプリメントで栄養素を補うのも一つの方法です。その場合、記憶力向上に効果があるビタミンB群やオメガ3脂肪酸などの栄養素を補助的に摂取するとよいでしょう。
サプリメントは手軽に摂取でき、医師の診断のもと適切に使用すれば副作用もほとんどありません。ただし、過剰摂取には十分注意し、バランスの取れた食事を基本としつつ、不足分を補う程度にとどめるようにしましょう。
脳トレアプリで脳を鍛える
最近では、スマートフォンやタブレットを使った脳トレアプリが多く登場しており、ゲーム感覚で楽しみながら脳を鍛えられます。パズルゲームや数字の記憶ゲームなど、さまざまなトレーニングが用意されており、自分に合ったものを選べるので、ほかの方法に比べて苦になりません。
40代・50代からでも記憶力は上げられる
記憶力を向上させるためには、まず記憶力が低下する原因、記憶力が良い人の特長を理解することが重要です。加えて、生活習慣や食生活を見直すことで、記憶力の維持や改善が見込めます。ほかにも、サプリメントや脳トレアプリなど方法はさまざまです。自分に合ったものを取り入れ、できることから始めてみましょう。
加齢とともに記憶力が落ちてくると「認知症ではないか」と心配になることがあるかもしれません。認知症は発症後の治療が困難なため、日頃からの予防とケアが重要です。しかし、認知症治療の研究は日々進んでおり、最新の知見や効果的な予防法もわかってきています。
より詳しく知りたい方は、こちらの「認知機能障害の改善に関する最新研究について」の記事をぜひご覧ください。