04認知症コラム
認知症の寿命は発症から何年?
進行段階や末期のケアを解説
2024.06.28
認知症の方はそうでない方に比べ、寿命が短くなる傾向にあることが報告されています。認知症の病型によっても進行速度は異なりますが、徐々に食欲不振や老衰が進行して寿命を迎えてしまいます。この記事では、認知症の進行段階や末期のケアについて解説します。
認知症の方の平均寿命(余命)
一般的に認知症は寿命を短くするといわれています。認知症の方の平均寿命(余命)は、発症から約5年から12年といわれていますが、性別や年齢、身長、認知症の病型や症状の進行度合いなどによって個々に大きく異なります。
認知症患者それぞれの抱えている要素や置かれている状況を理解し、それぞれにあった適切なサポートを行うことが重要です。
認知症の病型によって異なる平均寿命
1961年から疫学調査を行う九州大学の「久山町研究」が実施した調査では、認知症の10年生存率について以下の結果が報告されています。
10年後の生存率
アルツハイマー型認知症 | 18.9% |
---|---|
脳血管性認知症 | 13.2% |
レビー小体型認知症 | 2.2% |
混合型認知症 | 10.4% |
その他の認知症 | 14.4% |
上記左記の通り、認知症の病型により進行スピードや生命予後などが異なるとされています。アルツハイマー型認知症は比較的進行が緩やであるのに対し、レビー小体型認知症は生命予後が悪い傾向にあるといえるでしょう。
脳血管性認知症においては、認知症発症の原因が脳卒中や脳梗塞によるものであるため、進行のひと幅が大きい傾向がます。また、脳卒中や脳梗塞は繰り返す可能性も高いため、発症後の寿命が短くなってしまう場合も少なくありません。
ただ、認知症自体が発症する症状や進行具合に大きな個人差が出る病気です。当然、寿命についても年齢や性別などさまざまな要素が絡み合うため、それぞれの患者によって異なります。傾向についてはあくまで目安として捉え、人それぞれの抱えている要素や状況に理解することが大切です。
年齢
認知症を発症した年齢の違いは、余命に影響を与えます。これは、発症した年齢によって合併症を引き起こすリスクが異なることが理由です。
一般的に、高齢になると身体機能や精神機能が低下してしまいます。そのため、高齢であるほど合併症を引き起こしやすくなり、認知症発症からの余命が短くなる傾向があります。
性別
一般的に平均寿命は男性と比べて女性の方が長い傾向があるようです。厚生労働省の資料によると、平成22年時点での平均寿命は男性が79.55歳、女性が86.30歳とあり、女性の平均寿命の方が男性より長くなっています。平均寿命の性差に関する研究データでは、日本を含めた諸外国の女性と男性の平均寿命が比較されていますが、こちらでも女性の平均寿命の方が数年長いと報告されています。
平均寿命における性差について、明確な根拠はありません。現在これに関与していると考えられている要素は、遺伝子やホルモン、生活環境の違いなどです。
一般的な平均寿命における性差は、認知症患者の寿命においても影響を与える要素として考えられています。
症状の進行速度
認知症の症状の進行速度は、認知症の病型によっても異なります。一般的に、発症している認知症がゆるやかに進行する病型であるほど余命が長いとされます。
具体例として、アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症は進行がゆるやかです。レビー小体型認知症の進行速度は人によって異なりますが、ほかの認知症と比べると進行が早いとされています。
脳血管性認知症の場合、脳血管障害が起こるたびに進行していきます。ただし、損傷を受けた血管の位置によっては少ししか進行しない場合もあり、脳血管障害の再発などがなければ急激な進行を抑制できるでしょう。
肺炎
認知症の方の死因で最も多いのが肺炎です。認知症の進行によって嚥下機能障害が起こりやすくなるため、誤嚥性肺炎につながることが要因とされています。
肺炎とは、主に細菌に感染して肺に炎症が起き、発熱や呼吸困難を引き起こす病気です。認知症の方の場合、嚥下機能障害などで唾液を誤嚥してしまう可能性が高く、その結果口の中の細菌が肺に入りこむことで、肺炎を起こしやすくなります。
老衰
老衰とは、加齢に伴って体が衰弱していく状態を指します。認知症が進むと身体機能が低下していき、食欲不振になっていきます。食欲不振により低栄養状態が続くことで衰弱してしまい、その結果、老衰で亡くなるケースもあります。
- 衰弱による死亡原因の例
-
- 食べ物が認知できない、食べ方が分からない⇒食欲不振
- 運動機能が低下、段差や階段などへの対処が
分からなくなる⇒転倒
軽度認知障害(MCI)
軽度認知障害(MCI)とは、認知症の前段階で健常な状態と認知症の間の状態を指します。MCIでは1年間で約5~15%の人が認知症に移行するといわれています。一方で、1年間で約16~41%の人は健常な状態になるとも報告されており、この段階で予防に努めることが大切です。
初期(軽度)
認知症の初期は、発症から約1~3年程度の期間を指します。この段階では記憶障害が始まり、日常生活にわずかな支障が出始めるでしょう。しかし、自己管理能力はまだ保たれているので、早期発見と適切なケアが重要です。
中期(中度)
認知症の中期は、発症から2~10年程度の期間を指します。記憶障害が進行し、日常生活での自立が困難に。介護が必要になることが多くなる場合もあるでしょう。そのため、専門家の指導のもと、家族の理解とサポートが大切です
末期(重度)
認知症の末期は、認知症を発症してから8~12年程度の期間を指します。コミュニケーションが取りづらくなり、意思疎通が困難になります。さらに進行すると歩行障害が起こり、寝たきりの状態になることも少なくありません。
認知症末期のケアのあり方
認知症末期では客観的評価法を用いて、苦痛の存在に早く気づいて対応することが大切です。たとえば、肺炎は呼吸困難や喀痰、喀痰の頻回吸引などで苦痛が伴います。経口摂取ができなくなった人に対しても、口腔ケアを行うなどの予防的な緩和ケアが必要です。
食欲不振の場合には経口栄養剤を使用する場合もありますが、経口摂取ができない場合は経管栄養という方法もあります。
また、コミュニケーション不足になると本人が孤独を感じることもあります。意思疎通が難しくても非言語的コミュニケーションを継続して行い、一人にしないことが大切です。
人生の最終段階における
認知症の方の意思決定
認知症の方の意思決定において最も重要なことは、本人の意思を尊重することです。終末期にどのように過ごすかなど、治療方針などに事前に決めておきましょう。
本人に意思確認できない場合でも家族が事前に本人から意思を聞いていれば、それを「推定意思」として尊重し、ケアの方針を決めていきます。家族でも本人の意思がわからない場合は、情報を集め「本人ならどのように考えるか」を検討し、最善の方針を推定する必要があります。
家族のほか、医療・介護・福祉で携わる人たちみんなで考えることが大切です。
認知症は寿命を短くするリスク!
予防に努めることが大切です。
認知症は寿命を短くしてしまうリスクがある病気です。発症すると徐々に症状が進行していき、肺炎や老衰で死亡に至る可能性があります。完全に予防することは難しいですが、できるだけ早期に対策をして予防に努めるようにすることが大切です。