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04認知症コラム

MCI(軽度認知障害)とは?認知症との違いやチェック方法などを解説

2025.04.30

MCI(軽度認知障害)とは?認知症との違いやチェック方法などを解説イメージ

MCI(軽度認知障害)とは、健常と認知症の中間の状態です。この記事では、MCIと認知症の違いやセルフチェックリスト、症状の進行を防ぐポイントについてわかりやすく解説します。MCIは改善できると言われており、適切な予防が欠かせません。ぜひMCIへの理解を深め、認知症予防につなげていきましょう。

軽度認知障害(MCI)とはどんな状態?

MCI(Mild Cognitive Impairment、軽度認知障害)とは、健常と認知症の中間の状態のことです。認知機能や記憶力の低下は見られるものの、認知症とは診断できず、なおかつ健常な状態ともいえません。

MCIの状態の高齢者は約400万人といわれています。日常生活を正常に送ることはできますが、同年代の人々と比べると認知レベルは低下しているため、生きづらさを感じる機会があるかもしれません。

軽度認知障害(MCI)イメージ

MCIには健忘型と非健忘型の2種類がある

より細かく診断するために、記憶障害があるタイプを「健忘型MCI」、ないタイプを「非健忘型MCI」と区別することもあります。

MCIの主な症状は、認知機能と記憶力の低下です。ただし、個人差があり、すべての方に認知機能と記憶力の低下が同程度に見られるわけではありません。

また、健忘型と非健忘型に分けてから、認知機能の障害が複数あるかどうかでさらに細かく分ける医療機関もあるようです。

MCIが疑われる初期症状について詳しくはこちら

健忘型MCIとは
認知機能の低下に加え、記憶障害も見られるMCIのこと。ものを置いた場所を忘れる、何度も同じ話をする・同じことを尋ねる、大切な約束を忘れるといった症状が見られることがある。
非健忘型MCIとは
認知機能の低下は見られるが、記憶障害は見られないMCIのこと。注意力や集中力が低下する、自発的に行動しなくなる、計画性のない行動をするといった症状が見られることがある。

MCIの原因

認知症にはいくつか種類がありますが、中でももっとも罹患者が多いのがアルツハイマー型認知症です。そのため、アルツハイマー型認知症はMCIの原因の一つとも考えられています。

アルツハイマー型認知症を引き起こすのは、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積するからだと考えられています。アミロイドβはアルツハイマー型認知症が発症する十数年前から蓄積が始まっているのです。

そのため、MCIの段階でもアミロイドβは蓄積していると考えられ、認知機能に影響をおよぼす原因となりかねません。

アルツハイマー病について詳しくはこちら

MCIと認知症の違い

MCIと認知症の違いは、自立した日常生活を送れるかどうかにあります。MCIの段階では認知機能の低下は見られても、ほぼ支障なく一人での生活が可能です。しかし、認知症になると、周囲の手助けなしに日常生活を送ることは困難になります。

ただし、もの忘れに関しては、MCIと認知症に明確な違いは見られません。もの忘れが増えたと感じるときは、早めに専門医を受診してみましょう。

もの忘れと認知症について詳しくはこちら

MCIの場合 認知症の場合
食事の内容を一部忘れてしまう 食事したこと自体を忘れる
もの忘れの自覚がある もの忘れの自覚がない
どこにしまったかは覚えていないが、自分でしまった記憶はある 自分でしまったかどうかを忘れてしまい、誰かに盗まれたと考えてしまう

MCIのセルフチェックリスト

MCIが疑われるときは、右記下記のような症状が見られることがあります。該当する項目が多いときはMCIの可能性があるため、医療機関を受診し相談するのもよいでしょう。

また、家族に右記下記のような症状が見られるようになってきたとき、不安な場合には専門医に相談するのも一つです。本人が自覚していないケースもあるため、客観的な視点でチェックしましょう。

財布などの貴重品をどこに置いたかわからなくなることがある
数分前に聞いた話の内容を思い出せないことがある
同じ話や質問をすることが多くなった
これまで楽しんでいた趣味などに対する興味が薄くなった
家事や仕事などでの失敗が増えてきた
日常的な作業はできるが、難しい作業が苦手になってきた
計画的に物事を進めていくことが難しいと感じる
注意力や集中力が低下してきたように感じる
自発性が低下してきたように感じる
以前よりも自己中心的な考え方をしているように思う、また、そう指摘される

MCIは改善する可能性がある

MCIは早期に発見し、適切に対処すれば改善する可能性があります。再び健常な状態に戻ることもあるため、紹介したチェックリストも活用して早期に発見できるようにしておきましょう。

MCIの症状が進行して認知症になった場合は、再び健常な状態に戻ることは困難です。不安を感じるときは、医療機関を受診することも検討してください。

MCIスクリーニング検査プラスでリスクがわかる

MCIスクリーニング検査とは、採血でMCIのリスクを調べる検査です。アミロイドβの蓄積しやすさを調べることで、MCIになりやすいのか、すでにMCIになっているのかを判断します。

MCIスクリーニング検査だけを受けることも可能ですが、医療機関によっては人間ドックや健康診断のオプションとして選択できることもあるようです。MCIの早期発見・早期対応のためにも、気になる方は受けてみましょう。

CIスクリーニング検査プラスイメージ

MCIの進行を防ぐ5つのポイント

MCIに気づいても、適切な対応をしなければ進行を防げません。MCIの進行を防ぐために実施できることを紹介します。

早期に発見する 食事は栄養バランスを意識する 運動習慣を身につける 認知機能トレーニングを取り入れる コミュニケーションの機会を増やす

早期に発見する

MCIは健常な状態から認知症へと進行する途中の段階ともいえます。早期に発見すれば改善する可能性が高くなるため、少しでも早く発見できるようにすることが大切です。

不安に感じたときは、早めに医療機関を受診するようにしてください。また、周囲にも「もの忘れや同じ話や質問を繰り返していることなどがあったら、教えてほしい」と伝えておくとよいでしょう。

食事は栄養バランスを意識する

糖尿病の方は、そうでない方よりも約2倍認知症になりやすいといわれています。MCIや認知症を予防するためにも、食事は栄養バランスを意識し、糖質や質の悪い脂質(例:古い油、トランス脂肪酸など)の摂りすぎを控えてください。

MCIや認知症の予防には、ポリフェノールが有効といわれています。ココアやワインといったポリフェノールを多く含む食べ物も意識して摂取してみてはいかがでしょうか。また、孤食は認知機能の低下につながるとされています。できれば誰かと一緒に食事を楽しむようにしましょう。

認知症予防のための食べ物について詳しくはこちら

運動習慣を身につける

運動習慣がある方は、認知症になるリスクが低いことがわかっています。週に3日以上は運動するようにしましょう。

ウォーキングやスイミングといった有酸素運動は、認知機能の改善に効果があるといわれています。各自の体力や健康状態と相談しながら、適度な運動習慣を身につけるようにしてください。

認知機能トレーニングを取り入れる

脳を刺激することも、認知機能の低下を防ぐ方法の一つです。新聞や本を読んだり、楽器を演奏したりと、脳を刺激するトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか。

趣味として継続できるトレーニングなら、生活にもハリが生まれます。コミュニケーションも増やせるボードゲーム、脳だけでなく体も動かせるダンスなど、さまざまなトレーニングを継続していきましょう。

認知症予防のゲームについて詳しくはこちら

コミュニケーションの機会を増やす

周囲の人々とのコミュニケーションは、脳に刺激を与えます。家族とのかかわりも大切ですが、家族以外ともコミュニケーションをとるように意識しましょう。

たとえば、趣味のサークルやボランティア活動、地域住民とのスポーツ活動などを通して、コミュニケーションを増やせます。定年退職などにより社会的な活動が減った方は、とくに意識してコミュニケーションの機会を増やすようにしてください。

MCIの早期発見に努めよう

認知症は一度発症すると治療が難しいため、認知症の前段階であるMCIの時点で気づくことが大切です。「もの忘れが増えた」「集中力が持続しなくなった」など違和感を覚えたときは、医療機関を受診して、専門的な検査を受けることも検討しましょう。

MCIの時点で発見できると、適切な対応により健常な状態に戻ることがあります。紹介したチェックリストも活用して、早期発見・早期対応に努めましょう。

また、最新情報を入手することも大切です。認知症やMCIについての常識は日々変化しています。効果ある対策や適切とされる生活を実施するためにも、常に最新情報に触れるようにしてください。

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