04認知症コラム
認知症は遺伝する?
発症確率やリスクを軽減させる方法とは
2024.06.28
認知症の病型のなかでもアルツハイマー型認知症の発症には、遺伝が関連することがわかってきています。血液検査で簡単に検査することが可能です。この記事では、遺伝による認知症の発症確率やその調べ方、リスクを軽減させる方法について、詳しく解説します。
認知症の遺伝について
ほとんどの認知症は遺伝とは関係なく発症してしまいます。
まず、認知症のタイプには大きく分けて、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種類があります。なかでも、遺伝的要因で発症する代表的なタイプがアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症には、遺伝とは関係ない「孤発性」と遺伝が関係する「家族性」の2種類があります。「家族性アルツハイマー型認知症」は、アルツハイマー型認知症全体の5%以下とされています。そのため、遺伝以外の原因で発症する「孤発性アルツハイマー型認知症」の方が極めて多いといえるでしょう。
家族性アルツハイマー型認知症の特徴
家族性アルツハイマー病の大半は若年性であることが特徴です。
通常、アルツハイマー型認知症は65歳以上で発症することが多くみられます。一方で、家族性アルツハイマー型認知症は40~50代で発症することが多く、30代で発症することも珍しくありません。
若年性アルツハイマーの特徴は、高齢者と比べて症状の進行が早いことです。両親のどちらかが家族性アルツハイマー型認知症を発症した場合、50%の確率で子どももアルツハイマー型認知症を発症するといわれています。
レビー小体型認知症・
前頭側頭型認知症の遺伝
レビー小体型認知症とは、レビー小体という異常なタンパク質が脳内に蓄積し、神経細胞がダメージを受けることで発症するとされる認知症です。代表的な症状として、幻視やレム睡眠行動障害などがあります。レビー小体型認知症についても、発症リスクを高める可能性がある遺伝子変異についての研究が進められています。現在では、この遺伝子変異は東アジア人特有の遺伝子変異だと考えられています。
また、前頭側頭型認知症の一部にも家族性のものがみられることがあります。前頭側頭型認知症とは、脳の前部で萎縮が起こることで発症するとされる認知症です。同じ行為を繰り返す「常同行動」といった特徴的な症状が現れるとされています。ただし、家族性の前頭側頭型認知症が発症する例は、日本においては稀です。
アルツハイマー型認知症の遺伝に関わる遺伝子
アルツハイマー型認知症の遺伝には、原因遺伝子と感受性遺伝子の影響が考えられています。それぞれの遺伝子について解説していきます。
原因遺伝子
原因遺伝子とは、特定の病気の原因となる遺伝子のことです。原因遺伝子に変異が生じると、特定の病気を引き起こす可能性があります。アルツハイマー型認知症の発症には、下記右記の3つの遺伝子変異が関与していることが確認されています。
- アミロイド前駆体タンパク質(APP)
- プレセニリン1遺伝子(PSEN1)
- プレセニリン2遺伝子(PSEN2)
これらの遺伝子変異があると、アルツハイマー型認知症を発症する可能性が高まるでしょう。しかし、これら3つの遺伝子変異をもっているからといって、必ずしも認知症を発症するわけではありません。
感受性遺伝子
感受性遺伝子とは、特定の病気の発症リスクを高める影響力をもった遺伝子のことを指します。
アルツハイマー型認知症の発症については、「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞の機能が低下することが原因とする説が有力です。この「アミロイドβ」の蓄積や凝集に関与する物質として「アポリポタンパク質E(APOE)」があり、これがアルツハイマー型認知症の発症リスクを高める感受性遺伝子です。
APOE遺伝子には、ε2、ε3、ε4の3種類があり、これらが二つ一組になって遺伝子型を構成します。その組み合わせは、「ε2/ε2」「ε3/ε2」「ε3/ε3」「ε4/ε2」「ε4/ε3」「ε4/ε4」の6パターンです。
ε4はアルツハイマー型認知症のリスク因子とされています。ε4をまったくもたない遺伝子型に比べて、ε4を1つもっている場合は発症リスクが3.2倍、ε4を2つもっている場合は発症リスクが11.6倍と報告されています。ただし、ε4をもっているからといって必ず発症するわけではありません。
一方、ε2はアルツハイマー型認知症の防御因子として考えられています。
認知症の遺伝は予防できる?
遺伝による認知症の発症は、現在の医学では予防できません。
しかし、アルツハイマー型認知症の発症は、遺伝的要因だけでなく、後天的要因も大きく影響しています。したがって、一般的な認知症予防を行うことで、発症リスクを軽減できる可能性もあります。
具体的には、禁煙や運動、健康的な食生活など、規則正しい生活習慣を送ることが大切です。生活習慣を見直すことで脳の健康を維持し、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。
また、定期的な健康診断を受け、早期発見・早期治療を心がけることも重要です。
認知症の発症リスクは
「APOE遺伝子検査」で調べられる
遺伝子検査をすることで、アルツハイマー型認知症の発症リスクを知ることができます。現在では、アポリポタンパク質E(APOE)の遺伝子型を調べる「APOE遺伝子検査」が普及してきています。
しかし、APOE遺伝子検査で発症の有無は判定できません。この検査は、認知症を発症するリスクを知り予防につなげることを目的としています。あくまで発症リスクを知るための検査であることを理解しておきしましょう。
APOE遺伝子検査の受け方
「APOE遺伝子検査」は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを調べるための遺伝子検査です。検査は簡単な血液検査で行われ、医療機関で5ml程度の採血を行います。採血後2~3週間後に結果がわかり、検査結果は医療機関で受け取ることができます。
現時点ではAPOE遺伝子検査は健康保険適用外であり、費用相場は15,000円~20,000円程度です。自費で受ける必要があるので注意しましょう。
この検査は発症の有無を判定するものではありません。すでに気になる症状などがある場合は、かかりつけ医や専門医に相談しましょう。
認知症発症リスクを遺伝子検査で判定し、予防の対策を立てましょう
認知症には4つの病型があり、そのうちアルツハイマー型認知症には遺伝が関連することがわかってきています。アポリポタンパク質E 遺伝子が発症に関与するとされ、血液検査で簡単に検査でき、検査費用は15,000円~20,000円程度です。
自分の認知症発症リスクを検査して、予防するための対策や、発症した後の準備をしておきましょう。