04認知症コラム
認知症になると口座凍結されるって本当?
仕組みや事前にできる備えを解説
2026.03.30
「認知症になると口座が凍結される」といわれることがありますが、認知症を発症しただけで直ちに凍結されるわけではありません。本記事では、銀行が口座凍結を判断する基準を解説します。あわせて、口座が凍結されたあとに利用できる制度や、口座凍結に備えて活用できる制度もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
認知症による口座凍結とは?
銀行が本人の判断能力の低下を理由に
一部の取引を止めること
認知症が進行し、本人の判断能力が不十分と銀行が判断した場合には、預金者保護の観点から口座の利用が一時的に停止されることがあります。これは、民法第3条の2に基づき、本人が意思能力を欠く状態での取引を防ぐことが目的です。
ただし、死亡時のように金融機関が死亡の事実を知ったら当然に凍結してしまうのではなく、金融機関が個別にリスクを判断して対応します。
- 民法第3条の2
- 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
認知症により口座凍結されるとどうなる?
認知症により口座が凍結されると、本人名義の口座から自由に出金や振込ができなくなり、生活費や介護費用の支払いに支障が生じる可能性があります。家族であっても基本的には本人の意思確認ができない限り、代理での銀行取引は認められていません。
ただし、認知症による口座凍結の場合、公共料金などの自動引き落としは基本的に制限されず、継続されます。
| 認知症による口座凍結によりできなくなること | 引き続きできること |
|---|---|
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銀行が認知症の兆候に気づくきっかけ
本人の認知能力に問題があると考えられる場合、銀行は個別判断で口座取引を制限・凍結することがあります。ここでは、銀行がどのような場面で対応を検討するのかみていきましょう。
来店時に見られる言動の変化
来店時の受け答えや行動に乱れが見られると、銀行は認知機能の低下を疑う重要な手がかりとして受け止めます。認知症は初期から会話理解や注意力、短期記憶に変化が出やすく、対面でのやりとりに影響が表れやすい状態です。
窓口では取引内容の理解や判断が求められるため、普段と異なる反応が表面化しやすい場面といえます。
- 具体例
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- 受け答えが噛み合わない
- 同じ質問を繰り返す
- 書類の理解に時間がかかる
- ATM操作が極端に遅い
取引履歴に現れる不自然な動き
出金や振込の金額・頻度・相手先が急に変わると、銀行は認知機能の低下や詐欺被害の可能性を強く疑います。認知症が進行すると金銭管理能力が早期に低下し、これまでと異なる取引が増える傾向があります。
そのため、取引履歴の急激な変化は、客観的に確認できる重要な兆候として注視されます。
- 具体例
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- 急な大口引き出し
- 不審な相手への振込
- 代理取引の急増
家族や医療機関からの情報提供
家族や医療機関から「最近判断力が落ちている」といった情報が寄せられると、銀行は認知症の可能性を裏付ける強い根拠として扱います。銀行は日々の取引という限られた場面でしか本人を観察できませんが、家族や医療機関は生活全体の変化を継続的に把握しています。
銀行としては、家族等から情報提供があったのに凍結せずに放置してその口座から出金があった場合、後で後見人や家族(遺族)等から訴えられるおそれがあるので、こうした情報提供を無下にはできません。そのため、外部からの情報提供は、銀行の判断を補完する重要な材料です。
- 具体例
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- 家族からの相談
- 医師の診断書の提出
- 介護事業者からの連絡
銀行が口座凍結を判断する基準
口座凍結を判断する具体的な基準は、銀行ごとに異なります。代表的なケースは以下の3つです。
本人の意思確認が困難と判断された場合 代理人による取引が不自然に増えた場合 銀行内部の審査でリスクが高いと判断された場合
本人の意思確認が困難と判断された場合
銀行が口座凍結を判断する基準の一つが、本人の意思確認が困難な場合です。取引内容を十分に理解できない状態で手続きを継続すると、不正出金や詐欺被害が発生するおそれがあります。
また、後日「本人の意思によらない取引だった」と主張され、金融機関が紛争や責任を問われるリスクもあり、トラブルにもつながりかねません。本人保護と同時に、こうしたトラブル防止の観点も含め、銀行は対応を検討します。
代理人による取引が不自然に増えた場合
代理人による取引が不自然に増えた場合、本人の判断能力が低下している、または詐欺被害に巻き込まれている可能性が高いと判断され、口座凍結につながることがあります。
認知症が進行すると金銭管理が難しくなり、取引を第三者に依存する場面が増えがちです。銀行は本人の財産が危険にさらされていると判断した場合、取引の継続を控える対応を取ります。
銀行内部の審査でリスクが高いと判断された場合
銀行は内部規程にもとづき取引状況を継続的にチェックしており、その評価の中で「取引継続が本人に重大な不利益を及ぼす」と判断された場合、口座凍結などの措置が検討されます。
この判断は、不正利用防止や本人保護を目的とした内部基準にもとづいて行われます。認知症による判断能力の低下が疑われるケースでは、凍結が本人を守るための保護措置として位置づけられることがあります。
認知症で口座が凍結された後に
利用できる制度
法定後見制度:
口座凍結後に本人の財産を管理できる唯一の制度
法定後見制度とは、判断能力が不十分な本人に代わり、家庭裁判所が選任した後見人が法律行為や財産管理を行う制度です。
認知症により口座が凍結された場合でも、後見人が選任されれば法律上の代理権が与えられ、凍結口座からの引き出しや支払い、各種契約手続きが可能になります。
制度の利用には医師の診断書と家庭裁判所への申立てが必要です。手続きにはおおむね2〜3か月程度かかります。後見人は財産管理に加え、本人の生活や介護に関する意思決定をサポートする役割も担います。
認知症による口座凍結に備えるために活用できる3つの制度
口座凍結されたあとの対応策として利用できる制度は法定後見制度のみです。資産管理や生活への影響を少しでも抑えるために、口座凍結に備えて事前にできることも理解しておきましょう。
任意後見制度
任意後見制度は、本人が判断能力のあるうちに後見人を指名し、円滑に財産管理を行えるようにするための制度です。
法定後見制度と違って自分で後見人を選任でき、代理で行える内容も決められるため、不正が行われるリスクも抑えられます。口座が凍結されても、本制度で後見人が選任されていれば、生活費の確保や各種支払い手続きをすぐに再開することが可能です。
家族信託
家族信託とは、自身の財産管理を家族に預ける(信託する)ことを指します。資産をあらかじめ信託口座へ移しておけば、認知症を発症したあとも家族が継続して管理することが可能です。
信託契約で定めた範囲内であれば裁判所の手続きを必要としないため、後見制度と比べて支払い判断や手続きが迅速に行えます。
本人名義の口座が凍結された場合でも、信託口座の資金は別管理となるため、新たな支払いや臨時の費用対応など、日常生活に必要な支出対応が滞りにくくなります。また、後見人は基本的には財産の維持管理しかできませんが、家族信託であれば、資金の運用が行えるのもメリットです。
生前贈与
生前贈与とは、本人が生きている間に財産を他者へ譲渡することを指します。家族に資産を贈与して名義を変えておけば、認知症による口座凍結の影響を受けないため、生活費や介護費用、施設費などを家族が自由に管理できます。
ただし、生前贈与には贈与税や相続税がかかる場合もあるため注意が必要です。税負担を踏まえたうえで計画的に生前贈与を行えば、緊急時の有効な資金源になるでしょう。
認知症の口座凍結に関するよくある質問
「認知症で口座凍結になったらどうすればいい?」と不安を感じている方は多いでしょう。ここでは、よくある質問とその回答をまとめましたので参考にしてください。
認知症による口座凍結は、銀行によって対応が違うのですか?
認知症による口座凍結に備えて家族がやっておくべきことはありますか?
認知症で口座が凍結された場合どうやって生活費や介護費用を
支払えばよいですか?
Q認知症による口座凍結は、銀行によって対応が違うのですか?
異なります。本人の意思確認の方法や代理人対応、窓口での確認書類の扱いには、金融機関ごとの運用ルールがあるため、対応の仕方に違いが出ることがあります。たとえば、本人確認の厳しさや代理手続きの可否などは銀行によって運用が異なることがあり、一律ではありません。
Q認知症による口座凍結に備えて家族が
やっておくべきことはありますか?
家族信託や任意後見制度など、事前に利用できる制度を利用することが有効です。これらを活用すれば、本人の判断能力が低下したあとも家族が資産管理や支払いを円滑に進めやすくなります。また、日頃から家族で資産や手続きについて話し合い、必要な書類や本人の意向を整理しておくことも重要です。
Q認知症で口座が凍結された場合どうやって
生活費や介護費用を支払えばよいですか?
口座が凍結されて、そのまま何もしないと生活費や介護費用の支払いが困難になります。まずは金融機関や専門家に相談し、後見制度を利用して後見人を選任すると、その後見人が預金の管理・支払いを代行することが可能です。また、事前に任意後見契約や家族信託などを準備しておくと、凍結後aも家族が資金管理しやすくなります。
認知症に備えた口座管理は事前の準備が重要
認知症を発症しただけでただちに口座を凍結されるわけではありませんが、本人の資産保護と起き得るリスクを総合的に判断したうえ、銀行の判断で口座凍結される場合があります。口座を凍結されると、生活費や介護費用の管理に影響が出るため、事前に任意後見制度や家族信託、生前贈与などの制度を活用し、資産管理の仕組みを整えておくことが重要です。
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