Inflammation Accelerates Ageing 疲れて老ける ー 炎症が老化を加速
![疲れて老ける ー 炎症が老化を加速イメージ](/pj/anti-foia/images/headimage_Inflammation.jpg)
疲労のコアメカニズム:酸化で細胞が傷む 疲れるのは、細胞に「炎症」が起こるせい
疲労とは細胞が「炎症」している状態
活動能力の低下や疲れを感じやすい「疲労」状態になるのは、体の中の臓器・組織・細胞の中で酸化(錆つき)が起こり、錆つきが増えることで細胞障害が起こるからです。つまり、酸化から「炎症」が起こります。
疲労のメカニズム
![疲労のメカニズム](/pj/anti-foia/images/inflammation_mechanism.png)
私たちの体や脳が活動するために必要なエネルギーは、酸素を使って細胞内で産生されますが、その副産物として酸化力が強い「活性酸素」が発生する仕組みになっています。脳と体のオーバーワークで活性酸素が過剰になるとたんぱく質や脂質などが酸化されて、細胞が損傷します。細胞損傷を感知した免疫細胞はサイトカインを放出して炎症を引き起こし、脳に異常を知らせます。炎症が起こると、細胞ダメージはさらに進んで正常に機能しなくなり、活動能力は低下します。この負のスパイラル現象が疲労のメカニズムです。炎症が長く続いて細胞がダメージを受け続けると慢性的に疲れている状態(慢性疲労)となってしまいます。
筋肉痛も「炎症」の一つ 疲れの原因「炎症」って何?
炎症の役割は細胞損傷の修復や外敵排除も
疲労の原因となる「活性酸素」も「炎症」も、ただのワルモノではありません。体が正常に働くために必要な役割を担っています。
活性酸素には体内の免疫機能や感染防御の重要な仕事があり、細胞間のシグナル伝達、細胞の分化などの生理活性物質としても利用されています。また、炎症は自己防御システムの一つで、体の損傷部位の修復や有害な侵入者排除のために起こる反応です。細胞の損傷を感知すると、免疫細胞がサイトカインを分泌して脳に異常を知らせることで炎症という反応が起こりますが、修復も始まります。
例えば、運動をした後の筋肉痛も一種の炎症です。筋肉を使い過ぎて細胞が損傷されると、サイトカインが脳に異常のある場所と程度を知らせることで、炎症が起こる一方で修復が始まるのです。
修復のための重要な働きでもある「炎症」
![修復のための重要な働きでもある「炎症」](/pj/anti-foia/images/inflammation_repair.png)
「活性酸素と炎症」VS. 「抗酸化力と修復力」
バランスがとれていれば、炎症は正常に収束する
正常な体の機能を維持するための反応である炎症が、逆に体の活動能力を低下させたり疲れやすくするというのはどういうことでしょうか。問題は、活性酸素が過剰に生じることと、炎症が長く続いてしまうことです。
本来、私たちの体には抗酸化力と細胞修復のためのエネルギーといった2つの抵抗力が備わっています。これらが十分にあれば、過剰な活性酸素は取り除かれ、損傷した細胞は元通りに回復し、炎症もおさまるのです。しかし、抗酸化力と修復エネルギーが不足していると、酸化も炎症も収束せず、細胞はダメージを受け続けることになり、ヒトの活動能力の低下や疲労感も続くことになります。そして、慢性疲労、加齢関連疾患、老化へとつながることにもなります。
![「活性酸素と炎症」VS. 「抗酸化力と修復力」バランスがとれていれば、炎症は正常に収束する](/pj/anti-foia/images/inflammation_balance.png)
実は、疲労が老化を招いていた! 疲労性老化とは?
疲労はアンチエイジングの大敵でもあった!
「炎症」と「老化細胞」の蓄積が繰り返される
ことで老化を促進
誰もが等しく1年に1歳ずつ年齢を重ねるのが加齢ですが、老化は成長を終えた成人の生理機能が衰えていく変化のことで、変化の速度は人それぞれで異なります。
老化の原因はこれまでよくわかっていませんでしたが、近年、大きな原因の一つが炎症であることが明らかになってきました。さまざまな臓器や組織に起きている、長期にわたる慢性炎症です。脳と体のオーバーワークによって過剰に発生する活性酸素、そして炎症は、疲労を生じさせるだけでなく、老化まで引き起こしていたのです。
炎症は細胞に損傷をもたらしますが、損傷を受けた細胞が修復されないままになると、分裂を停止した「老化細胞」になります。老化細胞周辺からは炎症を起こすサイトカインなどが分泌され、さらに、周囲の細胞群にも炎症を拡げて損傷を与えていきます。
老化細胞は不要な細胞なので本来は免疫によって排除されますが、一部は体内に残って蓄積します。蓄積して増えた分、炎症を起こすサイトカインは慢性的に分泌されて量も多くなり、炎症をますます拡げたり、くすぶり続ける慢性炎症をも引き起こします。慢性炎症は、一見別の原因で生じるいくつもの老化関連疾患に潜む共通項です。
また、炎症や老化細胞の蓄積が繰り返されて続くことになれば、疲労が慢性化し、疲労性老化を招きます。つまり疲労の放置は、老化を促進させるということに他なりません。
疲労性老化のメカニズム
![「炎症」と「老化細胞」の蓄積が繰り返されることで老化を促進](/pj/anti-foia/images/inflammation_accumulate.png)
Pace of Aging(PoA)老化のタイミングと速度のコントロール
44歳に老化が集中して加速!
30代から始めたい老化速度のコントロール
- Pace of Agingとは
- 老化速度のこと。心身ともに健康でウェルビーイングな状態を目指して、老化のタイミングやペースを理解して、コントロールしていくというアプローチ。
アンチエイジングの世界は、日進月歩で新たな事実が判明し、情報は次々アップデートされています。今や老化は抗うものでなく、タイミングやペースを理解してコントロールする「ペース・オブ・エイジング(PoA)」の時代です。
新発見1
老化ピークは2回
ヒトの老化は一定のペースで少しずつ進行するのではないことが明らかになりました。2024年、スタンフォード大学の研究チームの発表によると、老化を大きく進ませる波が生涯に2回あるというのです。ヒトの老化のプロセスにおける生体中の様々な物質の分析によって、44歳と60歳に老化が集中しており、第一波の44歳には、第二波の60歳よりも、老化の分子マーカーに急激な変化が見られます。
この結果を考えると、アンチエイジングに取り組むのに、30代は決して早過ぎはしないでしょう。
老化関連分子 Waves of molecules and microbes during aging
![老化関連分子 Waves of molecules and microbes during aging](/pj/anti-foia/images/inflammation-column_graph.png)
対象:25歳から75歳の108人 方法:生体内のさまざまな物質を網羅的に分析(追跡平均1.7年、最大6.8年) 出典:Nat Aging (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00692-2
新発見2
若見えの人は老化速度が遅い
(ニュージーランド)
実年齢が同じ1,037人の健康状態を26歳から45歳まで追跡した結果、1年に0.4歳老化する人から2.44歳老化する人までいることがわかりました。その差はなんと最大6倍です。また、見た目が若い人は老化速度(PoA)が遅く、老けて見える人はPoAが早いことも確認されています。
1年当たりの老化ペース(PoA)
![1年当たりの老化ペース(PoA)](/pj/anti-foia/images/inflammation-column_poa.png)
対象:ダニーデン地方で1972~1973年に生まれた1,037人 方法:19のバイオマーカーを分析 出典:Nat Aging. 2021 March ; 1(3) : 295-308.を参考に作成
新発見3
老け顔の死亡率は、若見えの1.9倍!
(デンマーク)
70歳以上の双子1,826人の見た目と寿命を比較した研究で、若見えの人は老け見えの人より寿命が長いことが明らかになりました。調査開始から7年後の老け見えの人の死亡率は、若見えの人の1.9倍にも上ったのです。
遺伝的背景が同じ双子におけるこの研究結果から、見た目の若さ・寿命の長さの違いは遺伝から来るものでなく、生活習慣によるものと考えられます。毎日をどう過ごすか、その選択がPoAのカギを握るようです。
同じ遺伝背景を持つ双子でも
生活習慣によってPoAは異なる
![老化関連分子 Waves of molecules and microbes during aging](/pj/anti-foia/images/inflammation-column_twins.jpg)
対象:70歳以上の双子1,826人 方法:対象の双子の写真を41人の男女(看護師など)に見てもらい、何歳に見えるかを判定 出典:BMJ. 2009 December ; 339 : b5262.