04認知症コラム
アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」とは?
治療の受け方や費用をわかりやすく
2024.11.29
レカネマブは、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβを脳内から除去することで認知症の発症を抑制する医薬品です。認知症の疾患修飾薬としては国内で始めて承認された医薬品であり、認知症の新しい治療法として注目されています。この記事では、レカネマブの効果や費用、副作用などについて詳しく解説します。
レカネマブとは?
レカネマブは、2023年12月20日より販売が開始された、アルツハイマー型認知症の新しい治療薬です。
商品名は「レケンビ(LEQEMBI)」であり、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを除去し、症状の進行を抑制します。アルツハイマー型認知症の原因に直接働きかける治療薬としては、国内で初めて承認された医薬品です。
レカネマブは、「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」が治療対象です。レカネマブには、使い始めて数ヶ月の間に重大な副作用があらわれる可能性があるため、専門性など基準を満たした医療機関でのみ使用可能です。
アルツハイマー型認知症とは?
アルツハイマー型認知症は代表的な認知症の一つであり、記憶や思考、判断など認知機能の低下が進行していく病気です。認知症患者全体の60〜80%を占め、最も一般的な認知症といえるでしょう。主な症状としては、物忘れや意欲の低下、イライラなどの精神症状が見られます。
アルツハイマー型認知症の原因は、「アミロイドβ」という異常なタンパク質が脳内に蓄積することだとされています。アミロイドβの蓄積により神経細胞が破壊され、脳全体の縮小が引き起こされるのです。
レカネマブに期待される効果と副作用
認知症の新しい治療法として、レカネマブは注目されています。しかしその一方で、副作用を引き起こす可能性もあります。どちらもチェックして、使用を検討しましょう。
レカネマブに期待される効果
レカネマブはアルツハイマー病を発症する前に使用し、アルツハイマー病の原因だとされるアミロイドβの除去を促進する
レカネマブは、アミロイドβの除去を促進し、アルツハイマー病の進行を遅らせる効果が期待されます。レカネマブを2週間に1度、18カ月間投与する臨床試験では、認知機能の低下が約27%抑えられたことが確認されました。
これまでの認知症治療薬は、脳内の神経伝達物質を調整することで認知機能の低下を補う「症状改善薬」でした。しかし、レカネマブは疾患の原因に直接作用することから「疾患修飾薬」(疾患の原因物質を標的として疾患の発症そのものを抑えたり、進行を抑制したりする医薬品)として期待されています。
レカネマブの副作用
レカネマブの治療方法は、2週間に1度の点滴です。治療開始して初期の段階では、注射したときに頭痛、寒気、発熱、吐き気などあらわれることがあります。また、レカネマブは、アミロイドβを除去する過程で脳に負担がかかり、治療を始めて数ヶ月以内に脳が腫れたり、少量の出血が生じたりするという報告があります。
脳浮腫や少量の脳出血は放置すると重大な症状へと進行する恐れがあるため、レカネマブの使用には専門医療機関での観察と評価が必須です。
出典:厚生労働省「レカネマブ(レケンビⓇ点滴静注)について」
レカネマブ治療にかかる費用
レカネマブは体重50kgの人の場合、500mgを使用します。レカネマブ500mgあたり11万4443円で、患者の体重によって投与量が変わります。体重50kgの人で1年間にかかる薬価は298万円とされ、1ヶ月で約24.8万円です。
一般的なレカネマブの治療期間は1年半(18ヶ月)であり、診察料や検査費用なども含めると全体の治療費は500万近くになる可能性もあります。これらのことから、自費で治療を受ける場合は、治療費が非常に高額になることが考えられます。
レカネマブ治療は保険適用される
薬価が非常に高額にレカネマブですが、自己負担額はもっと少額になります。
レカネマブ治療を受けるには
まずは、かかりつけ医や認知症サポート医、認知症疾患医療センターに相談してください。レカネマブ治療を受けるには、医療機関でのMRIや神経心理検査を行う必要があります。
検査結果によってはレカネマブの治療対象とはならない場合もあるので注意が必要です。たとえば、認知症が一定以上進行していると判断された場合は、レカネマブではなく症状改善薬での治療が行われます。
レカネマブの治療対象となったら2週間に1度通院し、約1時間の点滴で投与されます。アルツハイマー型認知症以外の認知症の場合は、レカネマブの治療対象にはなりません。
- 専門機関への相談
かかりつけ医、認知症サポート医、または認知症疾患医療センターを受診し、レカネマブ治療の可能性について相談する - 精密検査と診断
アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)もしくは、軽度認知症であると判断された場合に、レカネマブ投与のための検査が行われる - レカネマブ投与のための検査
レカネマブ投与の禁忌事項に該当していないか、認知機能の低下や症状の程度がレカネマブの適用範囲内であるか、アルツハイマー病による認知機能の低下であるかを確認する - 投与開始
レカネマブに関するよくある質問
レカネマブは販売されてから間もないため、よくわからないこともあるでしょう。ここでは、レカネマブに関するよくある質問についてまとめています。ぜひ、参考にしてみてください。
Qレカネマブの投与によって認知症を完治させられますか?
認知症を完治させることはできません。現在の認知症治療は、認知症の進行を抑えて日常生活を維持することを目的としています。レカネマブについても、アルツハイマー型認知症の原因物質を除去して認知症の発症抑えるか、進行を遅らせる効果が期待されています。
Qアルツハイマー型認知症の進行がどの段階でも受けられますか?
レカネマブの投与対象は、「アルツハイマー病による軽度認知障(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」の患者のみを対象としています。MCIは認知機能に関して低下を感じているが、日常生活は正常に送れている状態です。認知症が進行している場合は、レカネマブの投与を受けられないため、早期に検査を受けることが重要です。
Qレカネマブ治療に高額療養費制度は適用されますか?
レカネマブの治療には健康保険が適用され、高額療養費制度の対象です。支払い上限額については年齢や世帯所得によって異なります。たとえば、70歳以上の一般所得者の場合、年間上限は14万4000円です。まずは、費用について医療機関で相談してみてください。
レカネマブは認知症の発症を抑える可能性がある
レカネマブは、アミロイドβに働きかけて脳内から除去するので疾患の発症を抑制する「疾患修飾薬」として期待されています。アミロイドβを除去する過程で脳浮腫や脳出血などの副作用が報告されているため、専門性などの基準を満たした医療機関でのみ治療を受けられます。受診を希望する前に、注意点を把握しておきましょう。
認知症は一度発症したら治療が難しく、普段からの予防、ケアが重要です。認知機能を維持するためには運動習慣や食生活など日頃の生活から意識する必要があります。認知症治療は多くの研究機関で研究が進められているので、最新研究をチェックしてみてみるのもよいでしょう。