04認知症コラム
認知症の家族と旅行はできる?
安心して楽しむための準備とポイントを網羅
2025.07.31

認知症の家族と旅行するのは難しいと思っている方もいるのではないでしょうか。しかし、注意すべきポイントを押さえ、しっかり準備をしておけば、安心して楽しむことができます。本記事では、認知症の家族との旅行で注意すべきトラブル、安心な旅行先の選び方を解説します。また、おすすめの専門サービスもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 認知症の家族との宿泊先を選ぶときに
チェックすべきポイントはありますか? - 移動手段はどう選べばよいですか?
- 認知症の家族が旅行中に不安や混乱を
起こしたらどう対応すればよいですか? - 本人が旅行中に「帰りたい」と
言い出したときはどうすればよいですか? - 旅行を嫌がった場合、それでも連れて
行ってよいのでしょうか?
認知症の家族との旅行は
無理ではない
認知症の家族との旅行は、事前の準備やトラブル対策をしっかり行えば十分に実現可能です。実際、旅行による新鮮な刺激には認知症予防効果があり、本人の幸福度を高める可能性があると研究で示唆されています。家族と過ごす充実した時間は、記憶障害があっても心に残り、良い思い出になるでしょう。
ただし、体調や介護の状況によっては旅行が難しい場合もあるため、医師やケアマネージャーと相談しながら計画を進めることが大切です。

認知症でも旅行に行く意味はある?
「認知症で記憶が薄れていくなら、旅行に行っても意味がないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、旅行は計画から実行、振り返りと、多くの刺激を含む活動です。いくつものステップを踏む中で脳が活性化され、認知機能の維持や向上にもつながる可能性があります。
旅行中も、現地での体験や人との交流を通じて、日常とは異なる刺激をたくさん受けられるため、脳の健康にはプラスになるでしょう。
認知症の家族との旅行で
注意すべきトラブル
認知症の家族と旅行する際には、思いがけないトラブルが起こることもあります。安心して楽しい旅を過ごすためにも、事前に起こりうるリスクを把握し、対策を立てておくことが大切です。
環境変化による混乱・不安
認知症の方は、慣れない場所に行くと自分がどこにいるのか分からなくなったり、不安を感じたりしやすいです。見当識障害があると、日常でできていたことができなくなり、温泉などの施設で他人の服を自分のものと間違えてしまうといったこともあります。そのため、家族や同行者がしっかりサポートし、本人が安心できる環境づくりを心がけましょう。
体調不良・疲労
旅行は普段と違う環境やスケジュールで活動するため、認知症の方は疲れやすく、体調を崩しやすい傾向にあります。季節によっては熱中症や風邪、感染症などのリスクも高まるため、こまめな水分補給や休憩、体温調節が大切です。また、体調の変化に本人が気づきにくい場合もあるため、同行者が常に注意して見守る必要があります。
本人の急な拒否・感情の変化
環境の変化や疲れから、認知症の方のなかには突然「帰りたい」「行きたくない」などと強く拒否したり、不機嫌になったりするケースがあります。これは混乱や不安の表れのため、無理に説得せず、本人の気持ちに寄り添いながら対応することが大切です。場合によっては予定を変更して休憩を取るなど、柔軟に対応しましょう。
徘徊・行方不明
認知症の方は見当識障害や記銘力障害により、自分の居場所がわからず徘徊してしまうことがあります。土地勘がない旅行先で行方不明になると、発見するのが非常に難しくなってしまうため、十分注意が必要です。「ほんの少しの時間なら大丈夫」と油断せず、GPS機器や連絡先カードを持たせるなど、万が一に備えた対策をしっかり行いましょう。
周囲との摩擦
旅行先では認知症に対する理解が十分でないことも多く、本人の言動に周囲が驚いたり、誤解したりすることがあります。例えば、大声を出す、同じ質問を繰り返すなどの行動が、周囲とトラブルになるケースも考えられます。誤解を防ぐためにも、事前に周囲に説明するなどの配慮が大切です。
認知症の家族でも安心な旅行先の選び方
認知症の家族と旅行する際は、安全で迷子になりにくく、静かでリラックスできる環境が理想です。移動時間が短く無理なく行ける場所を選ぶことで、本人の心身の負担が減り、家族も安心して楽しめます。右下記の旅行先選びチェックリストを参考に、最適な行き先を選びましょう。
旅行先選びのチェックリスト
移動時間は片道2時間以内で、乗り換えが少ないか | |
認知症の方の思い出や好みに関連した場所か | |
観光地の混雑度は低く、ゆったり過ごせるか | |
季節や気候が穏やかで体調管理しやすいか | |
緊急時に対応できる医療機関が近隣にあるか | |
宿泊施設はバリアフリー対応が充実しているか | |
客室からトイレ・食事場所・お風呂までの距離が近いか | |
施設の構造がシンプルで迷子になりにくい配置か | |
施設スタッフの認知症への理解度や対応力はどうか | |
食事は認知症の方の好みや嚥下状態に合わせられるか | |
日程変更や早めのチェックインに柔軟に対応してくれるか |
リスト認知症の家族と旅行するときに便利な持ち物
認知症の家族と旅行する際は、本人の健康管理やトラブルに備えた持ち物があると安心です。また、普段使い慣れているものを持参することで、環境の変化による戸惑いを和らげる効果も期待できます。持ち物リストを参考に、必要なものをしっかり準備しましょう。
- 必要な持ち物
-
- 本人の身元がわかるカード
- 保険証
- マイナンバーカード
- お薬手帳
- 常備薬
- 使い慣れた日用品(歯ブラシ、カップ、タオルなど)
- 服薬のタイミングがわかるメモやピルケース
- 念のための着替えと防寒具
- あると安心・便利なもの
-
- GPS付きの見守りグッズやタグ
- ウェットティッシュ・介護用おしりふき
- 旅行先の医療機関リスト、介護保険証のコピー
- 持病情報や緊急連絡先を記したメモ
認知症の家族と安心して
旅行するための3つの注意点
認知症の家族と旅行する際は、普段とは異なる環境や予期せぬトラブルに備えることが大切です。ここでは、家族全員が安心して楽しい旅を過ごせるよう、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

トラブルを想定して準備をする
認知症の方は慣れない場所で混乱や不安を感じやすく、体調の変化や記憶障害によるトラブルが起こりやすいため、事前の準備が欠かせません。必要な持ち物に加え、観光地や宿泊先近くの医療機関についても調べておくと安心です。
また、宿泊先や訪問先に認知症であることを伝えておくことで、スタッフの理解やサポートを得やすくなり、トラブルを未然に防げます。安全で快適な旅のためにも、余裕を持った準備を行いましょう。
- ポイント
-
- 旅行前にかかりつけ医に相談し、旅行の許可やアドバイスを得ておく
- 宿泊施設や訪問先に認知症であることを事前に伝え、理解と協力を得ておく
- 観光先や宿泊先近くの医療機関の場所や診療時間を事前に調べておく
無理のない行動計画を立てる
認知症の方にとって、無理なスケジュールや急な変更は大きなストレスや混乱の原因となります。本人はもちろん、同行者も疲れやすくなるため、十分な休憩や余裕を持った行程を心がけましょう。綿密な計画を立て無理のないペースで行動することで、家族全員が心身ともにリラックスして旅を楽しめます。
- ポイント
-
- 環境変化にとくに敏感な場合は、静かでリラックスできる場所を優先的に選ぶ
- 観光スポットのトイレや休憩所の場所をあらかじめ調べる
- (車いすの方は)観光スポットのバリアフリー状況も確認しておく
同行者も楽しめるようにする
認知症の家族をサポートするだけではなく、同行者が旅を楽しめるようにすることも大切です。配慮や準備で疲れてしまいがちですが、家族全員が笑顔で過ごした楽しい時間は、認知症の方であっても当時の感情を覚えている可能性があります。家族全員が充実した旅となるよう、無理のない範囲で楽しみながら行動しましょう。
- ポイント
-
- 家族で介護を分担し、全員が休息と楽しむ時間を確保する
- こまめな休憩と水分補給を心がけ、疲労の蓄積を防止する
- 専門家のサポートサービスを利用して、家族の負担を軽減する
認知症の家族との旅行に利用できる専門サービス
認知症の家族と安心して旅行を楽しむためには、専門的なサポートを受ける選択肢もあります。本人が安全に旅を満喫できることはもとより、家族の負担も減るため、活用を検討してみましょう。
トラベルヘルパー・旅行介助士
トラベルヘルパーや旅行介助士は、介護と旅行の両方に精通した専門家です。認知症の方の状態や希望に合わせて、旅行計画の立案から移動、食事、入浴、排泄など幅広い場面でサポートしてくれます。
1日あたりの相場は3万~5万円程度です。専門家の同行により、家族は介護の負担から解放され、認知症の方も安心して旅行を楽しめます。また、トラブル発生時にも迅速に対応してもらえるため、家族だけでなく本人にとっても心強い存在となります。
介護タクシー
介護タクシーは、介護資格を持つドライバーが提供するタクシーです。車両は車いすやストレッチャーに対応しており、ドア・トゥー・ドアの移動をサポートします。公共交通機関での乗り継ぎや移動のストレスがなく、認知症の方の体調や状態に合わせて安心・快適に移動できます。
費用は、運賃に加えて介助料や福祉機器のレンタル料が発生し、1日貸切で3~5万円程度が相場です。とくに体が不自由な方や長時間の移動が難しい方にとっては、非常に便利な選択肢といえます。家族にとっても、移動中の負担や心配を大きく減らせるでしょう。
介護付き旅行サービス
介護付き旅行サービスは、旅行会社が認知症の方とその家族のニーズに合わせてオーダーメイドの旅行を企画・提供するサービスです。トラベルヘルパーや介護タクシーなどの必要なサービスをワンストップで手配し、認知症の方の状態に合わせた旅程を組んでくれます。
旅行の準備から実施まですべてを専門家に任せられるため、家族は介護の心配や手間を省けます。初めての旅行でも、安心して質の高い体験ができるでしょう。
認知症の家族との旅行に関するよくある質問
認知症の家族との旅行には疑問や不安も多いでしょう。ここでは実際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。安心して旅を楽しむための参考にしてください。
Q認知症の家族との宿泊先を選ぶときに
チェックすべきポイントはありますか?
認知症の家族と一緒に宿泊する際は、バリアフリー対応や24時間スタッフ常駐、医療機関などへのアクセスが確保されているかどうかを確認しましょう。また、部屋の構造がシンプルで迷子になりにくいかどうかも大切です。さらに、本人が落ち着ける静かな環境や、転倒リスクの少ない設備が整っているかもチェックポイントとなります。
Q移動手段はどう選べばよいですか?
認知症の家族と旅行する際は、移動時間が短く、本人の体調や状態に合った交通手段を選ぶことが重要です。自家用車や介護タクシー、観光バスツアーなど、負担の少ない移動方法をおすすめします。また、公共交通機関を利用する場合は、乗り換えや待ち時間が少ないルートを選ぶと安心です。
Q認知症の家族が旅行中に不安や混乱を
起こしたらどう対応すればよいですか?
旅行中に認知症の家族が不安や混乱を感じた場合は、まずは落ち着いて声をかけ、静かな場所で休憩を取らせてください。無理に行動を強制せず、本人の気持ちに寄り添いながら、安心できる環境をつくることが大切です。必要に応じて、同行者がそばに寄り添い、ゆっくりと話を聞くことで、本人の不安を和らげることができます。
Q本人が旅行中に「帰りたい」と言い出したときはどうすればよいですか?
旅行中に本人が「帰りたい」と言い出した場合、まずはその気持ちを尊重し、無理に説得しようとせずに寄り添いましょう。必要なら予定を変更して早めに帰宅することも検討し、柔軟に対応することが大切です。本人の気持ちや体調を第一に考え、同行者も冷静に行動することが、トラブルを防ぐポイントとなります。
Q旅行を嫌がった場合、それでも連れて行ってよいのでしょうか?
本人が強い拒否を示す場合は、無理に連れて行かず、意思や体調を第一に考えて判断してください。無理な旅行は本人にも家族にも大きな負担となり、トラブルの原因にもなります。本人の気持ちをしっかりと受け止め、一緒に楽しめるタイミングを待つことも大切です。家族の思いやりが安心につながります。
認知症の家族との旅行は、
丁寧な準備と配慮を
認知症の家族と旅行する際は、本人の体調や気持ちに寄り添いながら、安全で無理のない計画を立てることが何より大切です。移動や宿泊、観光先の選定、トラブル時の対応まで、事前準備をしっかり行うことで、家族全員が安心して楽しい旅を過ごせます。
負担を減らしながら安全に旅行をするためにも、専門サービスの活用も積極的に検討しましょう。認知症の方と家族の思い出に残る時間を共有できるよう、余裕を持った旅行計画を立ててみてください。
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