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04認知症コラム

認知症による徘徊に役立つGPSの持たせ方は?種類や選ぶ際のポイントも解説

2025.12.25

認知症による徘徊に役立つGPSの持たせ方は?種類や選ぶ際のポイントも解説

認知症の方の徘徊は、発見の遅れが命に関わる場合もあります。その対策として有効なのが「認知症GPS」です。靴やキーホルダー、シールなどさまざまなタイプがあり、使いやすく工夫されたものや目立たないデザインのものもあります。この記事では、認知症GPSの持たせ方のコツや種類別の特徴、選ぶ際のチェックポイントを詳しくご紹介します。

認知症による徘徊対策で
GPSを持たせた方が良い理由

警察庁の統計によると、2024年の行方不明者のうち認知症またはその疑いがある人は1万8,121人で全体の約22%にのぼります。徘徊は深刻な問題であり、その対策として有効なのがGPSの活用です。

認知症による徘徊対策でGPSを持たせた方が良い理由 イメージ

徘徊の早期発見につながる

認知症の方が徘徊によって行方がわからなくなった場合、発見が遅れるほど事故や体調不良のリスクが高まって危険です。GPSを持たせておけば、家族や介護者が位置情報をリアルタイムで確認でき、徘徊時にもすぐに居場所を特定できます。

警察などへの通報も迅速に行えるため、早期発見・早期保護につながります。とくに、高齢者は気温や天候の変化に弱いため、発見までの時間を短縮できるGPSは安全を守るうえで、非常に有効な手段です。

介護者の負担が軽減される

認知症の方にGPSを持たせておくことで、介護者は常に目を離さず見張っておく必要がなくなります。外出時もスマートフォンなどで居場所を確認できるため、見守りにかかる時間や精神的な負担を大きく減らせます。

徘徊で行方がわからなくなった際も、捜索に費やす労力や不安が減り、迅速な対応が可能です。その結果、家族や介護者が安心して自分の時間を持てるようになり、家庭全体のストレス軽減にもつながります。

本人の自由な行動をサポートできる

認知症の方にとって適度な外出は気分転換や運動不足の解消につながり、心身の健康維持に欠かせません。GPSを持たせておけば常に位置情報を把握できるため、過剰に行動を制限する必要がなくなります。

安全を確保しつつ、気分転換に外へ出たり、近所を散歩したりといった自然な行動も無理なく続けられるようになるでしょう。

出典:警察庁生活安全局人身安全・少年課「令和6年における行方不明者の状況

課題別 認知症の方にGPSを持ち歩いてもらうための3つの工夫

認知症の方にGPSを持たせても、嫌がって使ってもらえないケースは少なくありません。ここでは、無理なく自然に持ち歩いてもらうための工夫を課題別にご紹介します。

課題 対策
GPSへの抵抗感が強い場合 渡し方の工夫や目立たないものを取り付ける
紛失や持ち歩き忘れの懸念がある場合 靴や衣服など装着するタイプを導入する
GPSをうまく扱えない場合 操作や管理が簡単な機器を選ぶ

渡し方の工夫や目立たないものを取り付ける

認知症の方の中には、GPSに対して抵抗を示したり、「目立つから」と嫌がったりする方もいます。そのため、渡し方や取り付け方に工夫が必要です。たとえば、「お孫さんからのプレゼントだよ」といったポジティブな声かけをすることで受け入れやすくなります。

また、GPSだとわかりにくいデザインを選んだり、衣服や持ち物にさりげなく取り付けたりすることで抵抗感が少なくなるでしょう。

靴や衣服など装着するタイプを導入する

認知症の方がGPSを持ち歩き忘れたり紛失したりするのが心配な場合は、靴や衣服などに装着できるタイプがおすすめです。たとえば、靴の中敷き部分に取り付けるタイプや、衣服に縫い付けたりシールのように貼り付けたりするタイプがあります。

靴や服などは日常的に身につけているものなので、比較的抵抗感がなく自然にGPSを持ち歩いてもらえるでしょう。

操作や管理が簡単な機器を選ぶ

認知症の方がGPSを正しく扱えない場合に備えて、操作がシンプルで管理しやすい機器を選ぶことも大切です。持ち運びに邪魔にならないコンパクトなサイズや、落下や水濡れにも耐えられる丈夫な設計のものならより安心でしょう。

また、充電の手間が少ないタイプを選べば、介護者の管理負担も軽減できます。長く安心して見守りを続けられるよう、使いやすく壊れにくいGPSを選ぶことをおすすめします。

認知症の方用のGPSの種類と特徴

認知症の方用のGPSには、持ち歩きや装着のしやすさなどに応じたさまざまなタイプがあります。ここでは、代表的な5種類の特徴と、それぞれの使い方に合った選び方のポイントをみていきましょう。

靴への装着型

靴へ装着するタイプのGPSは、中敷きや専用シューズに端末を内蔵するタイプです。外出時に履く靴に取り付ければ必ず持つ歩けるため、徘徊対策に適しています。また、デザインが自然で本人に気づかれにくく、抵抗感なく使えるのも大きなメリットです。

スマートフォン・専用端末型

スマートフォンの位置情報共有アプリや見守りアプリを利用したり、小型の専用端末を携帯したりして、リアルタイムで位置情報を確認できるタイプです。手軽に導入できる反面、充電切れや紛失には注意が必要で、管理面の工夫が求められます。

認知症の方用のGPSの種類と特徴 イメージ

腕時計型

腕時計型GPSはスマートウォッチとして常に身につけておけるため、持ち歩き忘れを防ぐことができます。歩数計や心拍数の測定機能を搭載したものも多く、見守りだけでなく日常の健康管理にも便利です。デザインも普段使いしやすく、違和感なく装着してもらえるでしょう。

リストバンド・ブレスレット型

リストバンド・ブレスレット型GPSは、おしゃれとして気軽に身につけられるのがメリットです。腕時計型よりも小型で、機能は必要最低限に絞られています。操作がシンプルで扱いやすいため、本人に負担をかけず自然に装着してもらえるでしょう。

キーホルダー・ストラップ型

キーホルダー・ストラップ型GPSは軽量で小型のため、鍵やカバンなど日常的に持ち歩くものに簡単に取り付けられます。ただし、徘徊対策として確実に持ち歩いてもらうには、外出時に本人が必ず持つ習慣のあるものに取り付けることが重要です。自然に持ち歩けるよう工夫しましょう。

認知症の方用のGPSを選ぶ際に
チェックしたい機能面のポイント

認知症の方にGPSを持たせる際は、端末の種類だけでなく機能面も重要です。ここでは、位置情報の精度や通知機能、バッテリーなど、選ぶ際に確認しておきたいポイントをご紹介します。

位置情報の精度と通信エリア

認知症の方の安全を守るには、誤差の少ない高精度なGPSが不可欠です。都市部や郊外、屋内などさまざまな環境下で安定して通信できるかよく確認しましょう。

緊急時に迅速な対応を可能にするには、位置情報の正確性を重視して端末を選ぶことが重要です。

ポイント
  • 誤差の少ない高精度なGPSを選ぶ
  • 都市部・郊外・屋内でも安定して通信できる端末を選ぶ

見守り・通知機能

リアルタイムで位置を確認できる見守り機能は、家族や介護者にとって大きな安心材料となります。とくに、設定したエリアを出た場合に通知がくるジオフェンス機能は、徘徊対策として非常に有効です。

また、移動履歴を確認できれば、日常の行動パターンを把握しやすくなり、より安全で効率的な見守りが可能になります。

ポイント
  • リアルタイムで位置を確認できる見守り機能が便利
  • エリア外移動を通知するジオフェンス機能が有効

緊急通報機能

ワンタッチでSOSを送信できる緊急通報機能は、徘徊や事故などの緊急時に迅速な対応が可能です。通報と同時に位置情報を共有できるシステムになっていればなお良いです。

操作が簡単でボタンが大きくわかりやすいデザインを選べば、高齢者でも安心して使えます。

ポイント
  • ワンタッチでSOSを送信できる緊急通報機能があれば緊急時に便利
  • 通報と同時に位置情報を家族や介護者と共有できるシステムならなお良い

バッテリーと充電方法

バッテリーの稼働時間は、見守りの安定性を確保するうえでも重要です。十分なバッテリー性能があるかはよく確認しましょう。

また、充電忘れを防ぐ通知機能があれば、常に安心してGPSを使用でき、日常の管理負担も軽減されます。置くだけで充電できるスタンド式なら高齢者でも扱いやすく便利です。

ポイント
  • 長時間稼働するバッテリーを選ぶ
  • 置くだけ充電や充電忘れ通知機能がある端末が便利

防水・耐久性

雨や水回りでも安心して使える防水性能は、日常的にGPSを活用するうえで必須です。加えて、落下や衝撃に耐えられる耐久性があれば、長く安心して使用できます。

日本産業規格(JIS規格)で定められたIPX規格などの防水・防塵基準を満たした信頼性の高い端末を選ぶとより安心です。

ポイント
  • 雨や水回りでも使用可能な防水性能があるかをチェック
  • 落下や衝撃に強い耐久性があるかも長く使ううえで重要

GPSを導入する金銭的負担を軽減する2つの方法

GPS端末は便利な一方で、当然ながら購入費用がかかります。しかし、レンタルや補助金を利用できる場合もあるため、積極的に活用して金銭的な負担を抑えましょう。

介護保険を利用しレンタルする

要介護認定を受けた方は、介護保険を利用してGPS機器を月額1~3割の自己負担でレンタルできる場合があります。GPS機器は「認知症老人徘徊感知機器」として福祉用具貸与の対象となることもあり、費用を抑えながら導入可能です。

ケアマネジャーを通じて申請できますが、自治体ごとに条件や手続きが異なるため、詳細を事前に確認しておきましょう。

各自治体から補助金をもらう

自治体によっては、GPS端末の購入費やレンタル費用を補助する制度が用意されている場合もあります。補助金額や内容は自治体ごとに異なりますが、一般的には上限10,000円〜15,000円程度です。

申請には事前相談が必要な場合が多いため、購入前に地域包括支援センターなどへ問い合わせて条件や手続きを確認しましょう。

GPS以外に取り入れたい
認知症による徘徊対策

GPSは徘徊対策に有効ですが、ほかの対策もあわせて検討することでより安全・安心な見守りが可能です。ここでは、GPSと併用してさらに安全性を高めるための補助的な対策をご紹介します。

身元確認のための情報を身につける 毎朝の写真で服装と特徴を記録する 外出を察知できる仕組みを玄関に設置する

身元確認のための情報を身につける

衣類や持ち物に名前や連絡先などの情報を記載しておくと、万が一徘徊しても発見者が本人を特定しやすくなります。紛失しないようにタグや布に書いた情報を縫い付けておくと安心です。早期発見や迅速な対応にもつながるため、基本的な対策として行っておきましょう。

毎朝の写真で服装と特徴を記録する

毎朝、本人の服装や髪型を写真で記録しておくと、徘徊時の捜索に非常に役立ちます。写真があると警察への届け出や情報提供の際に正確に伝えやすくなります。

また、日々の習慣として取り入れることで本人とのコミュニケーションのきっかけにもなるため、行っておきたい対策です。

外出を察知できる仕組みを玄関に設置する

認知症の方が外へ出た際にすぐ気づけるよう玄関に人感センサーやチャイムを設置するのも有効です。音や光で知らせてくれるためすぐに気づけ、徘徊の予防や早期対応につながります。

また、興味を引く物を玄関に置いておき外出のタイミングを遅らせるといった工夫も効果的です。

認知症による徘徊について詳しくはこちら

認知症GPSの活用で安全・安心な見守り環境を

認知症による徘徊対策にGPSを活用すれば、早期発見や介護者の負担軽減、本人の自由な行動のサポートが可能です。靴や腕時計、キーホルダーなど装着方法の工夫や、機能面の確認などのポイントを押さえ、安全で安心な見守り環境を作りましょう。

認知症の最新研究では、40Hz周期の音や光による刺激がアルツハイマー病による認知機能低下の抑制に効果があることがわかっています。これをGPSによる見守りなどの対策とあわせて取り入れることで、より包括的な安全対策が可能です。最新情報について詳しく知りたい方は、ぜひ「認知機能ケアプロジェクト」をチェックしてみてください。

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