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04認知症コラム

正常圧水頭症は治る認知症?
代表的な症状や治療法について解説

2026.07.17

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正常圧水頭症とは、脳室に留まった髄液が脳を内側から圧迫する病気です。発症すると認知症と似たような症状が現れることがあり、手術により治療できることもあるため、「治る認知症」といわれています。本記事では、正常圧水頭症の症状や他の認知症との違い、治療の流れなどについて解説します。

正常圧水頭症とはー治る認知症?

正常圧水頭症とは、脳を保護する「髄液」が脳室に留まり、脳を内側から圧迫する病気です。髄液量が増えることで脳室は拡大しますが、髄液圧は正常範囲内のため、正常圧水頭症と呼ばれます。

正常圧水頭症には、原因がはっきりとしない「特発性正常圧水頭症」と、くも膜下出血や外傷などの明確な原因により引き起こされる「続発性正常圧水頭症」があります。とりわけ特発性正常圧水頭症は60歳以上の方が発症しやすいことから、老化現象や認知症と誤認されるケースも少なくありません。

特発性と続発性の正常圧水頭症の違いについて詳しくはこちら

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正常圧水頭症が「治る認知症」と呼ばれる理由

正常圧水頭症に罹患すると、認知機能障害などの認知症に似た症状が見られることがあります。しかし、正常圧水頭症と認知症は同じではありません。治療が難しく進行性である認知症とは異なり、正常圧水頭症は進行速度が遅く、手術によって改善が見込める病気であることから、「治る認知症」と呼ばれています。

なお、正常圧水頭症の治療では、シャント手術が実施されることが一般的です。個人差や障害による差はあるものの、シャント手術による改善率は20%~90%といわれています。

正常圧水頭症で見られる
代表的な3つの症状

正常圧水頭症を発症すると、認知症と類似した症状が見られることがあります。代表的な症状について見ていきましょう。

歩行障害 認知機能障害 尿失禁

歩行障害

歩行障害は正常圧水頭症で見られる一般的な症状です。とくに、特発性正常圧水頭症の初期に現れやすいとされています。

代表的な症状としては、歩幅が狭くなり、足が高く上がらない「すり足歩行」が挙げられます。また、歩行を開始するときや方向転換がスムーズにできなくなるため、不安定さを伴う点も特徴です。なお、正常圧水頭症による歩行障害は、筋力低下が原因ではなく、脳からの運動指令がうまくいかないことによって起こります。

認知機能障害

正常圧水頭症を発症すると、記憶力の低下に加え、注意力の欠如や反応の鈍化などが見られることがあります。また、活動に対して興味が薄れる意欲減退(アパシー)が見られる点も特徴です。

尿失禁

尿失禁は、他の症状に伴い進行することがある症状です。初期には急な尿意や頻尿が現れ、進行するとトイレに間に合わなくなって失禁することがあります。

日常生活に支障をきたすばかりか、本人の心理的な負担となるため、外出に困難を覚える方も少なくありません。

正常圧水頭症と
他の認知症との違い

正常圧水頭症と認知症の代表的な種類でもあるアルツハイマー型認知症を比較しました。認知症とひとくくりに呼ばれますが、実際のところは原因も異なる別の病気です。

しかし、それぞれの症状が日常生活に影響を及ぼし、QOL(生活の質)を低下させる点は変わりません。気になる症状が見られるときは、早めに医療機関で相談しましょう。

正常圧水頭症 アルツハイマー型認知症
症状の
現れる順番
歩行障害が最初に現れることが多い。
次いで認知機能低下、尿失禁が続く。
記憶障害(物忘れ)が最初に現れ、歩行障害は末期まで目立たないことが多い。
歩行の特徴 磁石歩行(すり足)が典型的。足が地面に吸い付くようで上がりにくく歩幅が狭い。方向転換が不安定。 初期〜中期は比較的スムーズ。末期になると、脳の機能低下に伴い全体的に歩行が困難になる。
画像検査の所見 脳室の拡大が目立つ。一方で、脳の上部の溝が狭くなる(DESH所見)のが特徴。 全体的な脳の萎縮が見られ、特に海馬(記憶の司令塔)の萎縮が顕著。脳室拡大は脳の痩せに伴うもの。
治療による
改善可能性
「治る認知症」と呼ばれる。シャント術(髄液を流す手術)により症状の劇的な改善が期待できる。 薬物療法などで症状を穏やかにする、進行を緩やかにすることが治療の主体。

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正常圧水頭症の診断から治療までの流れ

正常圧水頭症の治療は、正確な診断が鍵となります。誤診を防ぐためにも、まずは適切な医療機関を受診しましょう。

1.脳神経外科や物忘れ外来へ相談する 2.CT・MRI画像で脳室の拡大を確認する 3.タップテストで症状の改善を評価する 4.治療を行う

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1.脳神経外科や物忘れ外来へ相談する

歩行や記憶、失禁などのトラブルが見られるときは、脳に問題がある可能性が考えられます。脳神経外科の受診を検討してみましょう。

また、物忘れが気になる場合は、「物忘れ外来」も検討できます。物忘れ外来は、認知症の鑑別を含めた専門的な評価を実施している外来です。症状が悪化する前に相談することにより、早期介入や自律した生活の維持が可能になることがあります。

2.CT・MRI画像で脳室の拡大を確認する

脳神経外科や物忘れ外来では、CTやMRIなどの機器を用い、脳室や脳表面の変化を画像化して診断に活用することがあります。脳室が通常よりも大きく、周囲の脳溝が狭くなっている場合は正常圧水頭症の可能性が示唆されることもあるでしょう。

画像検査を実施することで、脳腫瘍や脳梗塞などの他の脳疾患との鑑別が可能になります。また、視覚的な説明を受けることで、本人も病態への理解を深めやすくなるでしょう。

3.タップテストで症状の改善を評価する

医療機関によってはタップテストを実施することがあります。タップテストとは、腰椎から髄液を少量抜いて歩行や認知機能の改善が見られるか調べる手法のことです。

タップテストにより歩行機能の一時的な改善が見られる場合は、手術による改善も期待できると考えられます。安全性と有効性を確認したうえで治療方針を決定するためにも、タップテストは重要な指標の一つとなるでしょう。

4.治療を行う

正常圧水頭症の治療は、シャント手術により進めていくことが一般的です。体内に管を通すシャント手術を実施することで、髄液の循環が物理的に改善されると、脳室による脳の圧迫が軽減し、歩行や認知機能が改善されやすくなります。

なお、シャント手術の技術は日々進歩し、現代では比較的安全性が高い術式が採用されています。
高齢者も自立した日常生活へと復帰できることもあるため、本人の状態にもよりますが前向きに検討できるでしょう。

代表的な2つのシャント術式
V-Pシャント(脳室-腹腔シャント) L-Pシャント(腰椎-腹腔シャント)
管を通す場所 (脳室)からお腹(腹腔) (腰椎)からお腹(腹腔)
手術の
侵襲度(負担)
頭蓋骨に小さな穴を開ける必要があるため、L-Pに比べると負担は大きい(全身麻酔が一般的) 頭部を傷つけないため低侵襲(低負担)。高齢者や持病がある方でも実施しやすい。
主な
メリット
世界的に標準的な方法で実績が豊富
バルブにより流量を精密に制御可能
歩行や認知機能への確実な効果
頭に傷がつかないため精神的・身体的負担が少ない
術後の早期回復・早期リハビリが可能

正常圧水頭症の治療を受ける際の注意点

正常圧水頭症の治療は比較的安全性が高いとされていますが、いくつか注意すべき点もあります。主な注意点について見ていきましょう。

症状が改善する順番と回復の目安を把握する

シャント手術により正常圧水頭症の症状が急激に解消されるのではありません。一般的に「歩行障害」「排尿障害」「認知機能障害」の順に回復するとされています。

個人差はありますが、歩行障害は手術後数日から数週間で効果を実感することがあります。しかし、認知機能障害の改善は数ヶ月を要することもあるため、焦らず表情や意欲などの変化を見守ることが大切です。

「バルブ調整」を継続して髄液の流量を最適に保つ

シャント手術による効果を長期的に維持するためにも、術後の生活に合わせて「バルブの圧調整」が欠かせません。バルブの圧調整とは、体外から磁石を操作し髄液の流量を調整することです。正常圧水頭症の再発や頭痛を防ぐためにも、医師の指示に従い、適切なタイミングで通院するようにしてください。

合併症のサインを理解して早期発見に努める

シャント手術により合併症が起こる可能性があります。合併症の初期サインを見逃さないようにし、迅速な対応で重篤化を防ぎましょう。

たとえば、「起き上がると頭痛がするが、横になると楽になる」場合は、髄液の流量が多すぎる低髄液圧症候群の可能性があります。早めに医療機関を受診し、医師に相談してください。

ほかにも、手術痕の赤みや発熱、意識が急に薄れるなどの状態が見られる場合は、感染や血腫の可能性が疑われます。早めに医師に相談しましょう。

術後の主な合併症とサイン
低髄液圧症候群 シャント感染 硬膜下血腫
主な原因 髄液が過剰に流れることで脳の浮力が減る 細菌侵入による感染症 脳の圧力が急激に下がる際や、転倒による衝撃で脳の膜の間に血が溜まる
気づくためのサイン
  • 頭痛やめまいが起きる
  • 起き上がった時に頭痛がする
  • 横になると楽になる
  • 発熱や傷口の赤み、腫れ、痛みなどが現れる
  • 術後しばらく経ってから起こることもある
  • 頭痛や意識のぼんやり、麻痺など
  • 急な元気の喪失
対応 バルブの圧設定を外から調整することで、速やかに症状を改善できる 速やかに医療機関で抗菌治療を受ける
  • 室内環境を整えて物理的な事故を防ぐ
  • 画像診断による早期確認

ご家族ができる正常圧水頭症の方の生活の支え方

正常圧水頭症の方が快適に日々を送るためにも、ご家族の協力は欠かせません。ご家族ができるサポートについて解説します。

リハビリや生活習慣の工夫で
脳と身体の活性化を促す

手術後の回復力を高めるためには、日常的な運動と知的刺激を組み合わせることが効果的とされています。たとえば、歩行障害が見られる場合なら、歩行訓練が必要です。毎日実施することで筋力を回復するだけでなく、転倒予防にもつながるでしょう。

また、趣味や会話などによる脳への刺激は、脳の神経回路の活性化に寄与します。専門的な作業療法に加え、規則正しい食事や睡眠をとれるようにサポートすることで、機能の再生を根本から支えていきましょう。

認知症の作業療法について詳しくはこちら

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日々の変化を細かく観察して主治医への
情報共有を続ける

本人をよく観察することも家族ができるサポートの一つです。「表情が明るくなった」「歩幅が広くなった」などの小さな変化に気づくことは、バルブの圧調整の判断材料にもなります。

また、気づいたことを診察時に主治医に正確に伝えると、本人に合った治療をプランニングしやすくなるでしょう。まずは観察、そして医師に伝えることを心がけてください。

手術が難しい場合も安全な環境を整えて安全を守る

正常圧水頭症の手術を受けない場合でも、生活環境を適切に調整することにより症状の進行や事故のリスクを抑制することは可能です。

たとえば、家庭内の環境を見直すことも重要です。手すりを設置したり段差を解消したりすることで、転倒を未然に防げることがあります。

また、リハビリテーションや介護サービスを積極的に活用することも大切です。無理なく穏やかな療養環境を構築することで、本人のQOLを高めていきましょう。

正常圧水頭症に関するよくある質問

正常圧水頭症の症状や治療、手術後の経過について、患者さんやご家族からよく寄せられる質問をまとめました。適切な治療を選択し、安心して療養生活を送るための参考にしてください。

Q特発性と続発性の正常圧水頭症は何が違いますか?

特発性正常圧水頭症は原因がはっきりとしないのに対し、続発性正常圧水頭症は髄膜炎や外傷などの原因により発症する点が異なります。また、特発性正常圧水頭症は、高齢になってから発症することが比較的多い点も特徴です。

Q正常圧水頭症の手術をしないと寿命に関わりますか?

正常圧水頭症は早期に手術を実施することで、認知機能の回復が見込める病気です。手術をしないと寿命に関わることは報告されていませんが、手術をしない、もしくは手術が遅れることで健康寿命が短くなる可能性が指摘されています。

Qシャント手術は高齢者でも耐えられますか?

シャント手術は約1時間で、約1週間の入院が必要になります。手術が可能かどうかは本人の年齢だけでなく体力や正常圧水頭症の状態などから総合的に判断されるため、まずは医療機関に個別で相談してみることをおすすめします。

Q手術をしたのに症状が良くならないことはありますか?

正常圧水頭症の症状の中でも、歩行障害は比較的手術により改善しやすいとされています。しかし、歩行障害でも改善率は60%~90%程度のため、すべてのケースで完全に症状が改善するわけではない点に留意が必要です。

気になる症状が見られたときは早めに医療機関を受診しよう

正常圧水頭症は高齢になってから発症するケースも多く、また、認知機能障害や歩行障害などの症状が見られることから認知症と誤認される可能性があります。しかし、進行性の認知症とは異なり、治療により改善が見込める病気です。気になる症状が見られるときは、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

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