睡眠バランス研究PROJECT

専門家に聞きました 今の睡眠環境は課題だらけ!
質の良い睡眠を目指すには?
友野なお 先生

専門家に聞きましたイメージ
睡眠コンサルタントとして活躍する友野先生が、睡眠に関心を持ったきっかけはどういったことだったのでしょうか?
わたし自身が睡眠を改善したことで、15kgのダイエットと重度のパニック障害の克服、体質改善に成功した経験から、睡眠の大切さに関心を持ちました。こうした体験から、睡眠を深く理解し、皆さまに重要性を知っていただきたい想いで、出版や講演活動などを行っています。
現代の睡眠にまつわる状況や環境について教えてください。

睡眠の研究、睡眠に関連する記事、トピックス、睡眠のマーケットはこの10年でものすごい勢いで拡大しています。同様に、皆さんの「眠り」に対する意識や関心が上がっていることを感じます。睡眠への悩み、不満、ニーズをたくさんの方が抱えていることが浮き彫りになった一方で、皆さんの睡眠自体の改善は進んでいません。

改善されない要因はそれぞれの世代ごとに傾向があり、一概には言えないのですが、根本には眠ることについて「もったいない」や「怠けている」といったネガティブな刷り込みが、日本人には多くあるのではないかと考えています。

「眠りたい」を許さない社会的背景や家事、育児、また介護が分担できていないご家庭など様々な問題が、睡眠生活の改善を阻んでいると思います。

質の良い睡眠をとれているかどうかを知るには何に注目すべきでしょうか。
質の良い睡眠がとれているかの答えは、おのずと全部日中の行動に現れます。例えば「午前中に眠気が来ない」、「朝スッキリ起きられる」、「日中意欲的に活動が出来ている」、「日中にジャンクフードが食べたくなるような食欲が異常、過剰な状態になっていない」、「心身ともに健康だと自身が思える」などといった状態であれば、質の良い睡眠がとれていると言えるでしょう。つまり昼間の健康感、パフォーマンスが睡眠の質と同じなのです。日中のご自身を振り返ると、睡眠の質が良い状態か、または改善の余地があるのかが見えてきます。
質の良い睡眠を目指すにはどのようなことを意識すればよいのでしょうか?

睡眠は2種類の眠りで構成されています。ノンレム睡眠、レム睡眠です。質の良い睡眠は、前半で深い睡眠のノンレム睡眠に入り、後半にかけてレム睡眠に移行するというメリハリのある状態がおきています。このノンレム睡眠とレム睡眠の睡眠バランスがとれている状態が、睡眠の質の向上につながると考えられています。

実際にはメリハリがなく、寝ているのに心身が十分に休まらない、いわゆる「もったいない睡眠」をとっている方も多いです。

理想の睡眠時間について、友野先生のお考えをお聞かせください。
アメリカの国立睡眠財団が提唱している理想の睡眠時間は働き世代で7時間から9時間程度、60歳以上で7時間から8時間と表記されています※1。ただし、高齢者は6~7時間で良いのではないかと私自身は思っています。特に5時間を切ってしまうと様々な疾病のリスクが上がってくることがわかっています。「5時間を切らない」を一つの大事な目安として覚えてほしいです。
質の良い睡眠でノンレム睡眠、レム睡眠のメリハリが大事とおっしゃっていましたが、理想の割合などあるのでしょうか。
レム睡眠の割合は年齢によって変わってきます。子どものころはどんなことも初めて触れるような情報で、量が多く、その分整理する時間が必要なのだろうと考えられています。※2新生児だと睡眠全体の約50%、大人になると一晩に20%~25%ぐらいだと言われています。この数字はあくまで理想であり、個人差があるものなので、データで示すことは難しいのが現状です。最近はガジェットで睡眠を可視化させるものがありますが、結果を示すパーセンテージを判断材料の一つとして使うのもよいでしょう。ノンレム睡眠とレム睡眠のどちらかに偏らないで、メリハリをもって取ることができる「完全睡眠」になっているかチェックしてみてください。ご自身の睡眠改善のよい指針になると思います。

睡眠イメージ

※1アメリカ「国立睡眠財団」(National Sleep Foundation)
※2 宮崎総一朗『伸びる子供の睡眠学』(恒星社恒生閣、2009年)

友野なお 先生
友野なお 先生
睡眠コンサルタント
株式会社SEA Trinity代表取締役

順天堂大学 大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程にて睡眠を研究し、修士号を取得。
現在は、千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程にて睡眠とソーシャルキャピタルをテーマに研究を行う。
日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会 正会員。
自身が睡眠を改善したことにより、15kg以上のダイエット、重度のパニック障害の克服、さらに体質改善に成功。この経験から睡眠に興味を抱き、科学的に睡眠を学んだのち、睡眠の専門家として企業研修をはじめ全国で快眠メソッドを伝授。科学的なエビデンスを基本とした行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを行う。すぐに実践できて効果が体感できるメソッドが人気となり、現在では数多くの女性誌をはじめ、テレビ・ラジオ・執筆など、幅広く多方面で睡眠のスペシャリストとして活躍中。「疲れがとれて朝シャキーンと起きる方法」(セブン&アイ出版)など著書多数。

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