感染予防の最前線である「のど」。異物を排出する役割を担うのどの線毛運動にとっての大敵は「冷え」と「乾燥」です。

湿度が低下すると、のどの内側を覆っている粘液が減少し、それに伴い線毛の働きが弱まります。するとウイルスをすみやかに排出できなくなり、免疫反応としてのどに炎症が起き、さらには「せき」や「たん」が出るようになります。いわゆる「風邪」の症状です。

これ自体はからだの防御反応ですが、この反応が長引いたり激しくなったりすると炎症が悪化し、かえってのどの状態を悪くしてしまいます。その結果、線毛が傷を受けて壊れ、線毛運動がさらに低下するという「のど乾燥スパイラル」に陥るおそれがあります。これにより、風邪の症状が進行するだけでなく、慢性化するリスクも高まります。

またインフルエンザウイルスなどの感染によって、線毛細胞が死滅してしまうことも報告されています。一度ダメージを受けた線毛細胞が再生するには、3週間から1ヶ月ほどの時間を要する場合もあります。風邪の急性症状が治まっても、のどのバリア機能が完全に回復するまでは、次の感染を起こしやすい無防備な状態が続きます。ぶり返しやこじらせを防ぐためにも、症状がなくなった後ものどのケアを続けることが大切です。「風邪が治ったはずなのに、またすぐに症状が出てしまった」という状態にならないように、手を打つ必要があります。