04認知症コラム
老人性うつとは?主な症状や認知症との関連性、適切な対処方法を解説
2025.03.27

高齢者がかかるうつ病を「老人性うつ」と呼ぶことがあります。症状としてわがままや攻撃性がみられる場合があり、周囲の方は症状を理解しておく必要があるでしょう。この記事では、一般的なうつ病との違いや症状、家族の対応・接し方などを解説します。また、認知症との見分け方や、病院の何科で相談できるのかも紹介するので、最後までご覧ください。
老人性うつとは?
老人性うつは、高齢者がかかるうつ病のこと
「老人性うつ」とは、高齢者のうつ病のことです。正式な病名ではありませんが、加齢による身体的変化や社会的役割への不安などに起因することや、ほかの年齢層のうつ病と比べて身体的症状が強くみられる傾向にあることから、一般的なうつ病と区別することがあります。
また、身体的状況と精神的状況が強く連動していることも、高齢者うつの特徴です。たとえば、うつ病を発症したことでリハビリの意欲がなくなり運動機能の回復が遅れたり、身体が思うように動かないことで不安が高まりうつ状態が悪化したりすることもあります。

老人性うつの症状
老人性うつの症状は多岐にわたります。気分の落ち込みや興味の喪失、喜べないといった精神的な状態だけでなく、著しい体重減少・増加、食欲の減退・増進などがみられることが少なくありません。
眠れなくなったり、反対に睡眠時間が著しく増えたりすることもあります。いずれも単に加齢による変化ではない可能性があるため、気になる症状があるときは早めに医療機関を受診してください。
- 体の不調(頭痛、息苦しさ、吐き気、めまいなど)
- 著しい体重減少/増加または食欲の減退/増進
- 気分の落ち込み
- 興味が湧かない、喜べない
- 落ち着いてじっとしていられない
など
老人性うつと認知症の関連性
老人性うつと認知症は共存することが多い疾患です。いずれも記憶力の低下や集中力の欠如、活動意欲の減退といった症状が似ているだけでなく、認知症の前触れとして老人性うつがみられたり、老人性うつの症状が認知症のように見えたりすることもあります。
老人性うつか認知症のような症状がみられたときは、専門医に診てもらうようにしましょう。うつ病により認知症のように見えているときは、うつ病の治療をすることで日常生活における機能を改善できることもあります。

老人性うつと認知症の違い
老人性うつは、気分の落ち込みや意欲低下が顕著にみられる点が特徴です。一方、認知症は記憶や判断力の低下がみられ、日常生活に支障をきたすことがあります。
老人性うつは適切な治療により回復が期待できるのに対し、認知症は基本的に進行性で治癒が難しい場合がほとんどです。また、老人性うつは症状を自覚できるのに対し、認知症では症状の自覚が難しい傾向にあります。
老人性うつ | 認知症 | |
---|---|---|
発症の きっかけ |
親しい人との死別や身体の衰弱によるストレス | 脳の病気や障害、老化など |
初期症状 | 食欲減退、頭痛などの心身の不調、睡眠障害 | 普段の生活に支障が出る、ぼーっとしていることが増える、性格が変わる、など |
症状が 改善するか |
適切な治療により改善する可能性がある | 進行は遅らせられるが、根本的に改善はしない |
病気の 進行の特徴 |
短時間にさまざまな症状が出る | 徐々に記憶障害が進行する |
自覚の有無 | 症状を自覚できる | 症状に気づきづらい、または自覚できない |
老人性うつを引き起こす2つの原因
うつ病は年齢に関係なく発症する病気ですが、とくに高齢者に生じやすいことがわかっています。老人性うつを引き起こす原因について理解しておきましょう。
加齢に伴う心身機能低下
加齢により身体機能や認知機能が低下することは避けられません。身体・認知における機能が低下すると、日常生活の自立度も低下し、自信喪失を招くことがあります。
また、健康の減退や行動力の低下なども、自信喪失につながるでしょう。自信喪失が慢性的なストレスになってうつ病を引き起こしたり、脳卒中などの病気の合併症としてうつ病が引き起こされたりするケースもあります。
社会的孤立や喪失経験
高齢になると、喪失や孤独を感じる機会が増えます。自分自身の退職や親しい人々との死別などから、強い悲しみを感じるだけでなく、社会的ネットワークが縮小され、心理的なストレスが増加することも少なくありません。
とくに長年連れ添った配偶者などの近親者との死別は、うつ病を引き起こす精神的打撃となることがあります。また、社会的なサポートの不足も、老人性うつのリスクを高める一因です。
老人性うつの適切な治療法
身体的な病気と同様、精神的な病気も、早期発見・早期治療により重症化・長期化を防げます。「うつ病かな?」と疑われるときは、早めに医療機関を受診するようにしてください。
薬物療法
薬物療法では、抗うつ薬や抗不安薬を使用することが一般的です。ただし、高齢者は代謝機能が低下している傾向にあるため、薬の種類や投与量に注意を払わなければなりません。眠気が強まったり、口の渇きが生じたりする薬も、避けるほうがよいとされています。
また、うつ病以外の疾患を抱える方も多いため、ほかの服用薬との相互作用も考慮することが必要です。若い方と比べると副作用が出やすく効果が出にくい傾向にあるため、服用中は定期的に診察を受けることが求められます。
精神療法
老人性うつにかかる方は、精神的に疲れています。認知行動療法や支持的カウンセリングなどを通して、心身ともに休める環境を整えることが必要です。
しかし、高齢者は心を安静にし続けると、身体的機能が弱ってしまう可能性があります。ある程度精神的状態が落ち着いたら、周囲の人々が活動を促すようにしましょう。
家族ができる老人性うつへの対応法
身近な人々の関わり方によって、老人性うつが早期に改善されることもあります。家族ができる老人性うつへの対応法をみていきましょう。
ゆっくり休める環境をつくる
老人性うつだけでなく、うつ状態の方は心身ともに疲れています。また、真面目で無理をしがちな方はうつになりやすい傾向にあるため、心と体を休める環境をつくることが大切です。
たとえば、家事の負担を減らしたり、「手伝うよ」「一緒にしよう」といった声がけをしたりすることで高齢者の負担を軽減できるかもしれません。ただし、休みすぎは身体機能の低下につながるため、注意が必要です。
体を動かすきっかけをつくる
身体機能の低下により自信を無くし、気持ちが落ち込む方も少なくありません。高齢者の身体機能を維持するためにも、適度な運動習慣を持てるようにサポートしましょう。
運動不足は眠りの質の低下や食欲減退にもつながります。散歩や体操、買い物など、気負わず取り組める運動を日常生活に取り入れるようにしてください。
一緒に楽しめる趣味やイベントを見つける
孤独感からうつ状態になることもあります。家族や周囲の人々との関わりを増やし、高齢者が孤独を感じにくい環境を構築しましょう。
たとえば、散歩やカラオケ、将棋、ゲームなどの一緒に楽しめる趣味を見つけるのも一つの方法です。また、コンサートやスポーツ観戦などのイベントを作り、一緒に外出するのもよいでしょう。

老人性うつの家族へ接するときの注意点
老人性うつを発症している方への接し方を誤ると、症状を悪化させることもあるため注意が必要です。
たとえば、「疲れているのでは?」と労わる気持ちが強まるあまり、家事などを全部代わりにしてしまうと、高齢者は「私は何もできない……」「家族に迷惑をかけている……」と落ち込み、さらにうつ症状が悪化するかもしれません。高齢者をサポートするときは、本人の役割をすべて奪わないことが大切です。
また、精神科に抵抗を覚える高齢者も多いため、無理に病院に連れて行くこともおすすめできません。まずはかかりつけ医に相談し、かかりつけ医の意見として精神科や心療内科を勧めてもらうのも一つの方法です。
励まさない 心配しすぎない 原因を問い詰めない 重大な決定は延期する 距離を置いて見守る時間もつくる ゆっくり休ませる 通院を強要しない
老人性うつに関するよくある質問
老人性うつに関するよくある質問とその答えをまとめました。ぜひ参考にして、疑問解消にお役立てください。
Q老人性うつは治りますか?
早期治療により改善可能です。
うつ病は適切な治療により改善可能な病気です。老人性うつも例外ではありません。早期に治療を開始するためにも、老人性うつが疑われるときは早めに医療機関を受診するようにしましょう。
Q老人性うつの家族はどんな接し方をすればよいですか?
自尊心を傷つけないように配慮しつつ、孤独感や喪失感を軽減するようにサポートしましょう。
高齢者自身が活力を取り戻せるような環境を整えることが必要です。本人ができることをすべて奪わず、自尊心を傷つけないように配慮し、家族が一緒に過ごす時間を増やすようにしましょう。また、新しいことにチャレンジしたり、一緒に楽しめる趣味を持ったりすることもおすすめです。
Q老人性うつの疑いがある場合、何科に相談すればよいですか?
精神科や心療内科に相談しましょう。
うつ病は、精神科や心療内科の対応範囲です。早めに医療機関を受診し、適切な治療を開始できるようにしましょう。ただし、高齢者の中には精神科や心療内科に抵抗を覚える方もいるため、まずはかかりつけ医に相談するのも一つの方法です。
「老人性うつかも」と思ったら早めに医療機関を受診しよう
高齢者は若い方と比べてうつ病にかかりやすいといわれています。うつ病は早期に治療を開始することで、改善可能な病気です。「加齢により落ち込みやすいのだろう」と放置するのではなく、早めに医療機関を受診するようにしてください。
認知症と老人性うつの症状は類似するものも多いため、自己判断では対応を誤る可能性があります。正しい診断と適切な治療を受けるためにも、早めに医療機関を受診することが大切です。
また、認知症や高齢者うつの最新研究について知っておくことも、正しい対応に役立ちます。ぜひ以下から最新研究についての情報をチェックしてみてください。