Chapter03 茶葉と「発酵」
茶葉の種類は発酵の違い~緑茶、ウーロン茶、紅茶
緑茶もウーロン茶も紅茶も、もともとは同じ茶葉!違いは発酵度合い
紅茶の原料は、緑茶やウーロン茶と同じツバキ科の常緑樹チャ(チャノキ)の葉です。それぞれに異なる製法で作られることによって、違う種類の茶葉になります。3つの茶葉の違いは発酵の度合いです。紅茶は揉んで葉の組織や細胞を破壊したあと、十分に発酵させた「完全発酵茶」です。ウーロン茶(中国茶)は少しだけ発酵させた状態のもので、「半発酵茶」と呼ばれます。緑茶は揉んだ後の葉を、発酵を止めるためにすぐに加熱して作られる「不(完全)発酵茶」です。発酵の度合いによって、色や味、香りが違ってきます。
紅茶の種類は発酵の違い~緑茶、ウーロン茶、紅茶
生茶
どの茶葉も、スタートは同じチャ(Camellia sinensis)の葉
不(完全)発酵茶
緑茶
発酵を阻止して、もともとの葉の緑に近い色合いに仕上げる。保存性は低い。
半発酵茶
ウーロン茶
発酵を途中でストップさせている。色合いは緑茶と紅茶の中間。
完全発酵茶
紅茶
完全に発酵させている。紅茶ならではの色合い、渋み、香りは、発酵によって生み出される。
お茶は「酸化発酵」
ヨーグルトや納豆のような発酵食品は、細菌や酵母などの微生物によって物質が変化し、発酵します。しかしお茶の場合は、茶葉自身が持つ酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)の作用で、カテキンなどの成分が酸素と結びついて変化する「酸化発酵」です。紅茶製造における発酵は、酵素的酸化(酸化・重合※)を指しています。
一つの化合物の二個以上の分子が結合すること
発酵が変化させたポリフェノールが、
「テアフラビン」「テアルビジン」
紅茶ポリフェノールは、もとは緑茶ポリフェノールだった?!
お茶の葉は発酵することで紅茶の葉へと変化します。この時、色や味が変わるだけではありません。含有成分の構造が変化しています。抗酸化力の強いカテキン類は緑茶に含まれる代表的なポリフェノールですが、発酵が進むにつれて減少します。そして、テアフラビンというやはり抗酸化力の強い紅茶特有のポリフェノールへと変化するのです。
| 緑茶ポリフェノール | 紅茶ポリフェノール | |
|---|---|---|
| 主成分 | カテキン類(エピカテキン、エピガロカテキンガレート等) | テアフラビン、テアルビジン(カテキンが発酵で変化) |
| 製造過程 | 茶葉を発酵させない(不発酵茶) | 茶葉を完全発酵 |
| 色・風味 | 緑色、爽やかな渋み | 赤褐色、コクと渋み |
| 抗酸化作用 | 強い(特にカテキン類) コレステロール低下 |
強い(テアフラビンも高い抗酸化作用) 血糖値・コレステロール値改善 |
| 代表的効果 | 脂肪燃焼促進/抗菌・抗ウイルス作用/血糖値上昇抑制 | 脂肪吸収抑制・抗肥満/抗ウイルス作用/美白・色素沈着抑制 |
行は項目、列は緑茶と紅茶の比較表です。
紅茶ポリフェノールのテアフラビンから、
さらにテアルビジンに変わる
発酵がさらに進むと、今度はテアフラビンからテアルビジンという分子構造が複雑で多様なポリフェノールへと変化し、増えていきます。その後も発酵する過程で、段階的に複雑化しながら、紅茶の色や風味、健康・美容効果に寄与する紅茶ポリフェノールが作られます。
【発酵による変化】
緑茶ポリフェノール
カテキン類(Catechin)
緑茶の主成分
緑茶に多いカテキンが、紅茶製造の発酵(酸化・重合※)によって変化していく。 一つの化合物の二個以上の分子が結合すること
カテキン
確定された構造
紅茶ポリフェノール
テアフラビン(Theaflavin)
紅茶の赤色と渋み
カテキン分子2つが電子を共有する形で重合してできている。
テアフラビン
確定された構造
紅茶ポリフェノール
テアルビジン(Thearubigin)
紅茶の赤褐色とコク・深み
テアフラビンが複雑に重合して変化。分子構造は非常に複雑・多様で、構造が確定していない。 (カテキン類から生成されるという説もある)
テアルビジン
混合体で全体像は未解明
構造は未解明
テアルビジンは、構造が複雑な高分子の混合物で、単一の分子構造が確定していない。